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「藤井聡太八冠崩しの対抗策」に振り飛車はなれるか…「中終盤の押し合いで勝負できる」菅井竜也31歳に見る“AI評価値に現れない”可能性
text by
田丸昇Noboru Tamaru
photograph byJIJI PRESS
posted2023/12/13 06:00
2022年度の叡王戦、藤井聡太−菅井竜也の対局。年明けの王将戦は同カードとなる
強靭な受けではなく、さりげなく受ける感じで、一転して攻撃にいくその間合いが絶妙である。岡山県の同郷の大棋士・大山康晴十五世名人の将棋に通じるところがある。受けの達人の大山は、「受けるのは攻めるための準備」が極意だった。
そんな菅井でも、振り飛車に閉塞感を抱いて居飛車を用いた時期もあったが、数年前に腹をくくって振り飛車一本に決した。アマの間では相居飛車よりも振り飛車の方が人気があり、実戦でよく指されている。そんなファンの期待に応えるような振り飛車を指したいと、強く思っている。
藤井-菅井の過去対局を振り返ってみると
過去にあった藤井と菅井の対局についても振り返る。
2017年8月の王将戦で菅井は藤井と公式戦で初対戦し、菅井が勝った。2018年9月の棋王戦は菅井の中飛車に藤井は早繰り銀の作戦で急戦型となり、菅井が勝って2連勝している。2020年から2022年にかけては、両者は朝日杯将棋オープン戦、棋聖戦、王位戦などで対戦し、藤井が5連勝して苦手意識を払拭した。
それらの戦型は菅井の振り飛車穴熊に対して、藤井は居飛車穴熊または左美濃の作戦で、いずれも玉の守りを固める持久戦となった。
2023年4月に叡王戦五番勝負が始まり、藤井叡王に菅井八段が挑戦した。藤井は14期目のタイトル戦で、振り飛車党の棋士と初めて対戦した。
注目の第1局は、菅井の三間飛車に対して藤井は銀冠に玉を囲う作戦で、藤井が快勝した。第2局も菅井の三間飛車でともに穴熊に玉を囲い、菅井が勝って互角に戻した。第3局と第4局(千日手が2局)も第2局と同じ戦型になり、藤井が連勝して3勝1敗で防衛した。菅井は敗退こそしたものの、持ち味を発揮して見ごたえのある将棋を指した。
藤井は永瀬との練習将棋も再開したようだ
菅井八段は2023年11月7日から12月8日まで、王将戦リーグで豊島九段、佐々木勇気八段、近藤七段、A級順位戦で佐々木八段、竜王戦で斎藤慎太郎八段と対戦し、いずれも三間飛車を用いて勝った。来年1月から始まる王将戦に照準を合わせた戦法の選択と思える。11月以降は8割台後半の勝率で絶好調だ。
藤井竜王・名人は10月11日に王座戦五番勝負第4局で永瀬王座に勝ち、王座獲得と「八冠制覇」を達成。そして、それ以降も勝ちまくっている。