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「111年目で悪夢の初降格」暴動サポが“バス焼き討ち”、OBネイマールやドゥンガが落胆…ペレ、カズも輩出ブラジル名門サントス没落のナゼ
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沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byGetty Images/Takuya Sugiyama
posted2023/12/14 11:00
ネイマールらを輩出し、世界的名門として知られるサントスだが、ブラジル国内リーグで降格の憂き目にあった
残された時間は、9分程度とアディショナルタイム(7分)だけ。サントスは選手もサポーターも必死だ。人数をかけて懸命に攻めるが、プレーのアイディアが乏しく、シュートがゴールの枠にすら飛ばない。味方のセットプレーではGKまで上げたが、これも実らない。
逆に、アディショナルタイムに中盤でボールを失い、ロングシュートが前へ出ていたGKの頭上を越えてゴールへ吸い込まれ、万事休す。
主審が試合終了の笛を吹くと、選手たちはピッチへ倒れ込み、涙を流した。一方、サポーターの多くも頭を抱えて泣いていたが、一部は選手たちを罵り、小石などを次第に投げつけた。スタンドの椅子がはぎ取られ、ピッチへ投げ入れられた。
スタジアムの外では、クラブの施設が破壊され、近辺に駐車していたバス、救急車、車(その中には選手のものもあった)が次々と焼き討ちにあった――。
ネイマール、ドゥンガ、ロドリゴが悲しみのコメント
ペレは、1956年から1974年まで19年間、サントスに在籍した。1962年と1963年にクラブ世界王者となり、ブラジルリーグを6度、サンパウロ州選手権を10度制覇して黄金時代を築いた。
昨年12月29日に死去したが、彼のインスタグラムは関係者によって維持されている。試合の翌日、「生前、ペレは『厳しい状況にあればあるほど、勝ったときの喜びは大きい』と語っていた。来年、サントスが一致団結して戦い、1部へ戻ってくることを願っている」と記した。
サントスのアカデミーで育ち、2009年に17歳でデビューして2013年までプレーしたネイマール(現アルヒラル)は、自身のSNSで「サントスは永遠にサントスだ」と記した。これは、サントスの応援歌の一節で、サポーターやファンの合言葉だ。サントスとセレソン(ブラジル代表)の後輩であるFWロドリゴ(現レアル・マドリー)も「永遠に」と反応している。
ネイマールは「きっとまた笑顔を浮かべる日が来るに違いない」という前向きなメッセージも付け加えた。セレソンのキャプテンとして1994年ワールドカップで優勝カップを掲げ、1995年から1998年までジュビロ磐田でもプレーしたドゥンガは、若手時代の1986年にサントスに在籍して一流選手への階段を駆け上がった。当時19歳だったカズとも一緒にプレーしている。「サントスには特別な愛情がある。非常に残念だが、これからクラブを立て直し、復活してもらいたい」と語っている。
ネイマール移籍後、低迷は始まっていた
とはいえ、サントスの低迷は今に始まったわけではない。