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「111年目で悪夢の初降格」暴動サポが“バス焼き討ち”、OBネイマールやドゥンガが落胆…ペレ、カズも輩出ブラジル名門サントス没落のナゼ
posted2023/12/14 11:00
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph by
Getty Images/Takuya Sugiyama
かつてペレ、カズ(三浦知良)というブラジルと日本両国のキング、ネイマール、ドゥンガら名手、日本人ではFW前園真聖、MF菅原智らがプレーしたブラジルの名門サントスが、創立111年にして最大の屈辱を味わった。クラブ史上初めて、ブラジル2部へ降格したのである。
12月6日、ブラジルリーグ最終節(第38節)が行なわれ、パルメイラスが2年連続12回目の優勝を果たした。しかし、国内外でそれ以上に大きな反響を呼んだのがサントスの降格だった。
スペインのスポーツ紙『マルカ』は「この世にペレがいない最初のシーズンに、彼の心のクラブが降格した」、ポルトガルのスポーツ紙『ア・ボーラ』は「選手と多くのファンは悔し涙を流したが、一部のファンは暴徒化した」と報じた。
最終節前時点は“そこまで深刻ではなかった”
実は、最終節を前にしたサントスの状況はそれほど深刻なものではなかった。
ブラジル1部は20チーム制で、17位以下の4チームが自動降格する。サントスは勝ち点43の15位で、残留を争うのは勝ち点42のヴァスコダガマ(16位)と勝ち点41のバイア(17位)。18位以下はすでに降格が決定しており、この3チームのうち1つだけが2部へ降格するという状況だった。
3チームともホームで戦うが、対戦相手がサントスは中位のフォルタレーザなのに対し、ヴァスコはブラガンチーノ、バイアはアトレチコ・ミネイロといずれも上位の強豪。サントスは、「勝てば無条件に残留。ヴァスコとバイアのいずれかが引き分ければ、引き分けでも残留」という有利な状況にあった。
サントスの本拠地「ヴィラ・ベウミーロ」は超満員。サポーターは、1部残留を願って懸命に応援した。
前半39分、カウンターを浴びて先制を許し、サポーターは頭を抱える。前半を終えた時点でヴァスコとバイアはリードしており、このままならサントスは降格する。
しかし後半12分、サントスは左CKをCBメシアスが頭で決めて追いついた。さらにヴァスコが後半17分に追いつかれ、そのままならサントスが16位で残留できる状況となってスタンドから歓声が上がった。
降格が決まると、駐車場の車やバスが焼き討ちに
ところが――ヴァスコが後半36分に勝ち越す。バイアはさらにリードを広げて勝利を確定的にしており、サントスはどうしても点を取って勝たなければならない状況に追い込まれた。