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「カマダは長い目で見なきゃ。ひと目で分かるぜ」“ラツィオサポ聖地パブ”で聞いたナマ鎌田大地評…って、なぜ店内に日本代表フラッグが?
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byNurPhoto/Getty Images,Takashi Yuge
posted2023/11/30 20:15
CLセルティック戦後、古橋亨梧と健闘を称え合う鎌田大地。ラツィオサポ御用達パブの店主ジャンルカ・クルヅィさん(52)たちはどう見てる?
「厄除けにアイルランド人の常連客がやつらの大嫌いなユニオンジャックの旗を持ってきたよ(笑)」
店はラツィオ界隈で知らぬ者なしになり、レジェンドOBである故ジョルジョ・キナーリヤや若き日のDFアレッサンドロ・ネスタ、元主将MFセナド・ルリッチ(11-21年在籍)らが次々に訪れた。現会長ロティートも顔を出したことがあるという。
僕はそんな話を店の名物ハンバーガー「バラルディ」を頬張りながら聞いている。炭火焼きの赤身肉とフライドポテトに冷え冷えの生ビール。
正直なところ、ラツィアーレの巣窟と聞きつけ身構えていたが、実際に店に座ってみたら地元に愛される和やかな店で、噂とは当てにならないものだ。
会計を済ませ、家路につく客たちが店主ジャンルカと話し込んでいるこちらに気づく。小さな子供連れに女性客、皆一様に素朴な笑顔で「フォルツァ・カマダ!」と声をかけてきた。
「正直、鎌田についてどう思ってます?」と聞くと…
鎌田は今、地元紙の猛批判の対象となっている。ジャンルカに尋ねてみた。
正直、鎌田についてどう思います?
「外国人選手は長い目で見なきゃ。ドイツ人だろうがスペイン人だろうが、イタリアのサッカー文化は独特だから飲み込むのに誰でも苦労するもんだ。何かと比較される(在籍8年目の)ルイス・アルベルトだって入団して1年目から大活躍してたわけじゃない。鎌田はきちんとしたテクニックとクオリティある選手だって、ひと目見りゃ誰でも分かるぜ。だから安心して期待している」
SNSではない、地元ファンの生の声を聞いた気がした。
店の厨房そばの壁には、世界中のラツィオ・ファンクラブから送られたステッカーが貼られている。
「ラツィオが好きってだけで、国や言葉を超えて仲間になろう、相手を理解しようって思えるんだ。うちは気取った店じゃないけど、これってすげえことだろ」
店を出たら、外の広場は真っ暗で寒空が広がっている。それでも、CLの決勝トーナメントを待ちわびながらの年越しだ。今年のナターレ(クリスマス)は、ラツィアーレにとってきっと例年より暖かいものになるだろう。