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坂本花織“フィギュアスケート20年目”の心機一転…GP2連勝で語った「イメージがつかない方が面白い」「自分エライ、と褒めようかな」
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byGetty Images
posted2023/11/24 17:00
GPフィンランド大会フリーを終えた坂本花織。優勝でファイナル進出を決めた
新プログラムに秘めた“チャレンジ”
今季は、新しいタイプのプログラムに挑戦している。SPはジェフリー・バトルが振付の「Baby, God Bless You」。ドラマ「コウノドリ」のテーマソングで、坂本本人が選んだ。甥と姪が誕生した喜びから、新たな生命の誕生をテーマにしたのだが「ゆっくりな曲って、どうしても内容が薄くなっちゃうから、柔らかい動きの中にも自分らしい迫力を見せないとつまらない演技になっちゃうよと先生に言われているので、難しいところです」と悩んでいる。2試合連続で演技構成点は9点台に届かず、この大会後に振付のブラッシュアップする予定なのだという。
一方フリー「Wild is the Wind/Feeling Good」は今一番売れっ子のアイスダンスコーチでもあるマリーフランス・デュブレイユの振付で、これまでにない大人っぽいジャズナンバーである。ゴールドと黒のハイネックのノースリーブドレスに、肘の上までくる黒い手袋をあしらった衣装も、世界チャンピオンに相応しいゴージャスさだ。どのような経緯で選んだ作品なのか。
「今シーズンのフリーの曲を選ぶときに、まずはマリー先生が選んでくださった曲と私がやりたい曲を1個ずつ出してみて、途中までは両方すすめていて、全然違う曲なんですけど今のフリーの振付のサルコウまでの部分、ジャンプ3つ分の振りをこっちの曲でもやって、マリー先生が選んでくれた曲でもやって……この先、進めたい曲はどっちと聞かれて今のこの曲になりました」
「イメージがつかない方が面白い」
どちらが選んだ曲だったのか。
「マリー先生です」
坂本が持ち込んだもう一つの曲は、「マスク・オブ・ゾロ」のサントラだった。だが途中まで滑って見て、完成形が見えてしまったのだという。
「やってる自分がイメージできて……あんまりイメージがつかないこっちの方が面白そうと思ったんです」
特にストーリーなどはないが、ポーズをとるのではなく、一つ一つの動きをつなげていくようにと指導を受けた。音にはめてポーズをきめていた昨季のジャネット・ジャクソンの真逆、と説明する。2、3年前の自分だったら、恥ずかしくて滑れなかったが、「今の自分にならできるんじゃないのかな」と感じて選んだ。