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「紗理那が選ばれればよかった」7年前の“衝撃発言”の本音とは? 石井優希が“ライバル”だった古賀紗理那に“闘争心”を抱かなかった理由
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byYUTAKA/AFLO SPORT
posted2023/11/26 11:00
同じアウトサイドヒッターとして高め合った古賀紗理那(左)と石井優希。キャプテンとして奮闘する古賀にエールを送った
代表での最後の舞台となった東京五輪でも、対角を組むことは叶わなかった。大会初戦のケニア戦の試合中、古賀が右足首を捻挫してしまった。しばらく立ち上がれず、スタッフに抱えられてコートを出たあと、代わって入ったのが石井だった。以降、古賀が第4戦の韓国戦で復帰するまで、石井が先発を務めた。
「私自身は調子が上がりきっていない中でのオリンピックでしたが、選んでもらっているので、紗理那の代わりとか、紗理那が怪我したから入ったという捉え方じゃなく、もう本当に自分の今のベストを出そう、とにかくやり切ろうと思ってやったので、あまり戸惑いもなかったし、私自身はあの大会に後悔はありません。ただ、私のプレーが至らなさすぎて、足が全然治る前に紗理那が無理して出場することになってしまったので、そこに関してはすごく申し訳ないんですけど、でもたぶん紗理那も、申し訳ないと思ってもらいたいわけじゃなくて、無理してでも出たいという気持ちがあったと思う。
『紗理那は強いな』と思いました。結構腫れていたし、足の色も変わっていたけど、『全然痛くない』と言って。ケニア戦で足をひねって倒れた時に、なかなか立ち上がれなかったんですけど、それを『私ちょっと大げさでしたよね?』みたいな感じで笑って言って。本心じゃないと思うんですけど、他の選手の前でそういうふうに言える紗理那はすごいなと、心から思いました。私だったら『イターい!』って言ってますよ(苦笑)」
石井が感じ取った古賀の変化
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古賀の立ち居振る舞いが変わったと石井が感じたのは、2020年のことだったと振り返る。
「もともとバレーに対する熱はすごく強くて、試合の前にアナリストの部屋に行って一緒にデータ分析をして、ノートにまとめたり、コートの中で『ブロックはこうしよう』とか積極的にしゃべっていた。そういう熱はずっと変わっていません。ただプレーや立ち居振る舞いという面では、コロナのタイミングで変わったのかなと感じます」
2020年は新型コロナウイルスの影響で東京五輪が延期となり、代表合宿も解散。代表選手たちは各所属チームで過ごした。
「紗理那もNECでの練習期間が長くあって、そのあとのVリーグで対戦した時から、『なんか紗理那、違うな』と感じたんです。一番は、自信がついたのかなと。その年から速いトスを打ち始めて、決定率もグンと上がった。それまではちょっと速いトスが苦手だったと思うんですけど、その(2020-21)シーズンに急激に速いトスを打つようになったのでビックリしました。たぶんNECで時間をかけて克服して、自信を持てたんじゃないでしょうか。自信から出てくるものってあるので、そこでさらに強くなったのかなと思います」