猛牛のささやきBACK NUMBER
「代走で準備しといてくれ」に仰天サプライズが…オリックス・T-岡田が明かした「岡田彰布と中嶋聡」“二人の恩師”が操る言葉のマジック
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKiichi Matsumoto
posted2023/11/23 11:03
T-岡田の登場時は、オリックスファンのボルテージが最高潮に
こんなやり取りをして練習を終え、代走はないだろうから代打かな、などとイメージしながら、たまたま用があってチームマネージャーのところに行くと、マネージャーがちょうどスタメン表を書いていた。
「そこに僕の名前があったんで、『え? スタメンやないですか!』って。そこで初めて知ったんで、そこからずっと緊張しっぱなしでした(苦笑)。まさかスタメンで行くとは思ってなくて、ビックリしました」
大一番の前でも、指揮官はそんなちょっとしたいたずらを仕掛けていた。
二軍生活が長かった35歳のシーズンの最後に、勝てば優勝が決まる試合に呼ばれて、しかもスタメン起用。意気に感じないはずがない。
「シーズンを通してなかなか一軍にいられなかったですし、チームの力になれなかったんですけど、なんとかね、少しでもチームの力になりたいというのは、ずっと最後まで思いながらやっていたので、最後の最後、呼んでくれたり、本当にいい場面で使ってもらったり。監督にはほんと、感謝しかないです」
低迷期を支えたレジェンド
高卒でオリックスに入団してから18年。勝てなかった時代に本塁打王を獲得してファンに希望を与え、その後もオリックスの長い低迷期を主軸としてもがいてきたT−岡田が打席に立つと、京セラドームは熱量が一段上がり、特別な雰囲気になる。
「それに関しては毎回、本当に感謝しかない。そういう声援をいただけることが、僕の原動力の一つ。しんどい時に奮い立たせてくれるものの一つになっているのは間違いない」
T-岡田はいつもそう話しているが、そうやって球場の空気を変えられる力も見越しての、大一番での起用だったのかもしれない。
指揮官がそれぞれの人心掌握術でリーグを制した阪神とオリックス。11月23日の両チームの優勝パレードで関西ダービーの熱は一区切りとなりそうだが、来年も関西からスポーツ界を盛り上げてくれることだろう。