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「藤井聡太を誰が倒すのか?」年下棋士は“わずか3人”という驚きの事実…1学年下、上野裕寿(20歳)が語る「(藤井先生は)遠い存在です」
text by
大川慎太郎Shintaro Okawa
photograph byKYODO
posted2023/11/18 06:01
藤井聡太よりも1学年下、現在20歳の上野裕寿。第54期新人王戦決勝三番勝負で藤本渚を制し優勝を果たした
「『藤井世代』と呼ばれるように頑張っていきたい」
そうなのだ。15歳で三段に昇段した上野には、全員が名人位に就いている「中学生棋士」になれる可能性があった。「もちろん狙っていましたけど、結果は惨敗だった(4勝14敗)ので厳しさを味わいました。最初は実力不足でしたけど、徐々に力をつけていったと思います。ただ高校3年間でもっと強くなれたんじゃないかという後悔はあります」と語る上野だが、大学進学を断念して将棋に打ち込み、ついにプロデビューを果たしたのだ。
新人王戦本戦を勝ち上がったのは最後の三段リーグを戦っている最中で、伊藤匠と俊英の増田康宏に勝利したのは「大きな自信になった」。勝利した伊藤が現在、竜王戦七番勝負で藤井と相まみえているが。
「うーん、特に見方が変わることはないですね。伊藤先生は自分より早くプロになって活躍していますので、遠い存在です」と上野は語る。
藤井についても「遠い存在です」と同じ答えがあった。「かなり早くから活躍されているので、年が近いというイメージすらない。交流もないですし。自分が『藤井世代』と呼ばれるように頑張っていきたい」と素直に話した。藤井とは練習も含めて一度も指したことがないかと思いきや、奨励会トーナメントで一度だけあるという。藤井三段、上野4級の時で「ボロ負けしましたけど、対戦できて嬉しかった」と振り返る。
新人王戦第3局は取材後の10月31日に行われ、最終盤の大逆転で上野が制した。「プロ入り31日目での棋戦優勝は史上最速」というおまけつきでいきなり勲章を手にしたが、棋士人生は長い。「目標はタイトル獲得です」と意気込む。すぐに「ネクスト藤井」を探す性急な時代だが、三段時代の上野がそうだったように一歩一歩でいい。その先に、藤井との大勝負が待っている。
上野裕寿Hirotoshi Ueno
2003年5月5日、兵庫県生まれ。井上慶太九段門下。'15年に奨励会入りし、'18年に三段昇段。'23年の三段リーグで14勝4敗とし四段に昇段した。大の阪神ファンで好きな選手は佐藤輝。