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「責任は感じています」今季まさかの不振、昨季DeNAチーム最多勝・大貫晋一に何が起きていた? 本人が語る“マダックス”までの道のり
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byJIJI PRESS
posted2023/11/13 11:01
前半戦は苦戦も9月の終盤戦で復活を遂げた大貫晋一。今季、一体何が起きていたのか。本人が振り返る。
「なかなかファームで一緒にいることはないメンバーだったので、いろんな話をしましたね。とくに三嶋さんには『お互い、そろそろ一軍に上がらないと本当にダメだよね』って言われて、本当にその通りだなって。頑張らなければいけない、と」
本当、チームには迷惑をかけてしまって…
その後、約1カ月ぶりに一軍へ昇格した大貫は、遅まきながら真価を発揮する。昇格後初登板となった9月12日の中日戦(横浜スタジアム)こそ、6回2失点で黒星を喫したが、つづく18日の阪神戦(甲子園)では6回無失点、そして9月25日の巨人戦(横浜スタジアム)では、7回途中まで投げ11奪三振、無失点で自身3カ月ぶりの勝利を挙げている。
「やっとでしたね。本当、チームには迷惑をかけてしまって……。真っすぐはまだまだだとは思いましたが、それでも変化球のキレもよくなったし、同じ軌道からのコンビネーションにおいて、ツーシームとスプリットが作用してくれたので、ピッチング術の部分ではだいぶ取り戻せた感覚がありました」
初完封まで5年も掛かってしまって…
投球のテンポも良くなり、ファウルでカウントも奪え、相手に的を絞らせることなくゲームを作りやすくなった。これが本来の大貫の姿である。
そして今季のハイライトとなったのが本拠地最終戦となった10月1日の中日戦だろう。大貫は巧みな投球術で9回を投げ切り、プロ初完封を達成した。しかも94球で収める“マダックス”という価値あるピッチングだった。
「マダックスもうれしいのですが、やっぱり完封ですよね。春先に9回2アウトまで投げて降板していたので、絶対に達成したいなって。いや本当、初完封まで5年も掛かってしまって……。調子ですか? 普通でした。でも早めに相手バッターが手を出してくれたので、テンポよく進められましたね。とにかく球数が少なく完封できたことが、自分にとって自信になりました。やはり、どんどんゾーンに投げ込んでいくこと。今季は東(克樹)もそんな感じでしたけど、ゾーンにボールを集める大切さに改めて気づきました」
もやもや感も少しは晴れた
そう大貫は言うと、ひと呼吸おいてつづけた。