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ロッテ・藤岡裕大が明かす「幕張の奇跡」の裏側…初めて腹をくくった“長打狙い”「ゾーンってこんな感じかも、って」…大歓声に誓った“ある決意”
text by
梶原紀章(千葉ロッテ広報)Noriaki Kajiwara
photograph byChiba Lotte Marines
posted2023/11/10 11:00
劇的な一打を放った藤岡を出迎えるベンチはお祭り騒ぎ。スタジアムは興奮の坩堝と化した
試合は振り出しに戻り、勢いに乗ったチームは安田尚憲のサヨナラヒットで一気に勝利を決めた。「幕張の奇跡」――。延長戦に起こったこの一連のマリーンズの攻撃はファンの間でそのように言われるようになる。
「歓声がすごかったですし、家族も見に来てくれていた。ファンも家族も喜んでくれた。本当に良かったと思う」と藤岡は言う。
「これがバファローズとの差」
その日は興奮で眠りにつくことができなかった。だから、睡眠不足のまま新幹線に乗り込み、次なる戦いの舞台オリックス・バファローズの待つ大阪へと移動した。ただ、ファイナルステージでは奇跡は起きなかった。10月18日の初戦はバファローズの絶対的エース山本由伸から初回に3点を先制するなど勢いそのままに攻撃をしたが、結果的に5−8で逆転負けを喫した。
翌19日こそ逆転勝利をしたものの、その後、2連敗。マリーンズの2023年は終わりを迎えた。試合後、誰よりも悔しさを表に出していたのは藤岡だった。ホテルに戻って仲間たちと食事をしていた時も何度となく「勝ちたかった」と語気を強めた。
「やっぱり悔しいですよ。あそこで勢いがついていけると思った。今までクライマックスシリーズで勝ちきれなかったけど、今年のチームならいけると思っていた。だからめちゃくちゃ悔しかった。ただ、あと一歩というかこれが現状のバファローズとウチの差だと思う。それは本当に感じさせられた。力の差を感じた」
「来年こそ」藤岡を突き動かす思い
千葉に戻った藤岡はすぐにZOZOマリンスタジアムで練習を再開した。来年こその想いが藤岡を突き動かす。
「今年はいいところもあったけど、もう少しできたはずだという想いが強い。体調不良で離脱してしまったのも、もったいなかった。もちろん、あのホームランは嬉しいですけど、今はシーズントータルで悔しい気持ちの方が上回っています」と話し、オフの取り組みについては「テーマは長打力。今はすぐに数値が出る時代なので。スイングスピード、打球速度、ボールを捉える角度を上げていきたい」と意気込みを語った。