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ランディ・バースが語った伝説の3連発「掛布の当たりは打った瞬間入ると思った」「岡田の打球は完璧だった」《1985年阪神優勝秘話》
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKYODO
posted2023/11/04 06:15
1985年の阪神対巨人戦で、阪神クリーンナップによる「伝説のバックスクリーン3連発」の1本目を放ったランディ・バース
「カキ(掛布)の当たりは打球の角度も高かったし、ベンチで見ていても打った瞬間に入ると思ったね。でも、それよりさらに良かったのが岡田の打球だ。完璧だった」
こうバースは記憶を手繰った。
「バックスクリーン3連発というのは、直接的にはあの年の優勝の大きなポイントではなかったかもしれない。でも、ひとつ、言えるのはあの試合を含めて開幕直後に巨人に3連勝した。それが大きかったと思う。オレたちは優勝するためには巨人を倒さないとダメだ、という話をいつもしていたからね。その巨人をいきなりあの3連発で打ちのめして3連勝した。そのことが大きかったと思うよ」
今は故郷の米オクラホマ州で州議会議員となったバースは、伝説の意味をこう語る。
セ・リーグ記録を更新する219本
このシーズンは三冠王となったバースが54本、掛布が40本、岡田が35本、1番打者だった真弓明信が34本とプロ野球タイ記録となる30本塁打カルテットが誕生し、チーム本塁打も最終的に当時のセ・リーグ記録を更新する219本を放って圧倒的な長打力で他チームを凌駕したのは確かだった。ただ、打線ばかりがクローズアップされたこのチームの本当の強さはもうひとつ違うところにあった、と語るのは4番を打っていた掛布なのである。
「あのチームの強さは守りだった。あの優勝は守り勝った優勝だと思っている」
今はGM付育成&打撃コーディネーターに就任し、主に二軍で若手の指導に当たっている掛布は言う。
「僕はリーグ優勝を決めた会見で『みなさんは200発打線とかホームラン、ホームランとか言うけど、僕は守り勝ったチームだと思う』って言ったんです。確かに1対0の試合はできない。8点取られるかもしれない。でも打線が9点取って、その最後の1点を守りきれる守備力があった。それがあの年のタイガースの強さだったと思うんです」