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派手な髪色、ネイルもオシャレ…等身大の大学生でも《学生最速》大ケガから復帰の青山華依が示す“次世代スプリンター像”「来年は髪もバチバチに…」 

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荘司結有

荘司結有Yu Shoji

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posted2023/11/04 17:00

派手な髪色、ネイルもオシャレ…等身大の大学生でも《学生最速》大ケガから復帰の青山華依が示す“次世代スプリンター像”「来年は髪もバチバチに…」<Number Web> photograph by AFLO

昨年4月の日本学生個人選手権100mで青山が記録した11秒47は現役の学生トップタイムだ

「先輩たちの卒業リレーだったので本当は出る予定じゃなかったんですけれど、走れなくなった先輩の代わりに『リハビリのご褒美に出ていいよ』って先生のお許しが出て(笑)。個人的には『もっとちゃんとした復帰してよ』みたいな批判も来るのかなと思っていたのですが、『走る姿を見れて嬉しかったです』とか『面白かった』とかすごくうれしい声をいただいて安心しました」

 ご褒美レースを経て、本格復帰の一歩を果たした青山。まだリハビリ期間は続き、本人も「多少左右差は感じますし、膝を伸ばし切るのが怖い感覚もある」と言うが、伊東氏によると順調に“青山らしい走り”に戻ってきているという。

 実は伊東氏、青山の手術日から復帰レースまでの200日以上の間、願掛けのために自らに「禁酒」を課していたそうだ。

「やっぱり自分の子どもくらいの歳の子があんなに大変な思いをしているのが可哀想だったんですよ……」

 伊東氏の教え子に対する父親のような愛情を感じるエピソードだが、当の青山に話を振ると、声を少し潜めながらこう打ち明けた。

「私も教員の方からその話を聞いたんですけれど……『先生そうなんだ、なんかすごいな』って。でも、私は退院してすぐに飲みました。今も時々飲んでます。梅酒派なんです(笑)」

 いたずらっぽい笑みを浮かべる青山。師弟の落差に思わず笑ってしまったが、そのあっけらかんとした性格も、彼女の魅力なのだろう。ただ同時に、自身をサポートしてくれた恩師や周囲への深い感謝も口にする。

「先生は診察にも一緒についてきてくれて、色んなタイミングで『よく頑張った』とか『よく耐えたね』と優しい言葉をかけてくれたんです。方向性を間違えないように、練習もすごく丁寧に組んでくれてました。

 マネージャーさんとか応援してくれる方のありがたさをたくさん学んで、怪我をする前は『しんどい』とか弱音も多かったんですけれど、周りが応援してくれる分、自分自身も成長しなきゃという気持ちも強くなったと思います」

目標はパリ五輪…独自路線を貫いて夢舞台へ

 来年に控えるパリ五輪。青山は焦らず一歩ずつ、その距離感を縮めていくつもりだ。

「五輪はまだ諦めたわけではないので、今回のレースを第一段階として行けるところまで行きたいなとは思っています。自分を持ったアスリートでいたいという思いは変わっていませんし、目に留めてもらえるような選手でありたいです。来年は髪ももっとバチバチに染めようかな(笑)」

 しなやかに、そして逞しく。試練を乗り越えた若きスプリンターは、もう一回り大きな華を咲かせるはずだ。

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