今季はタイ・バンコクのアジア選手権から始まり、ブダペスト世界選手権、中国・杭州アジア大会と国際大会が続いた。仮に青山が例年の成績を残していたなら、いずれかの大会で代表に選ばれる可能性は高かっただろう。

　しかし、本人は出場が叶わない現状に対して、悲愴感に浸ることはなかったという。

「単純に見る側としてすごく楽しかったんです。『ああ、出たかったなあ』と羨む気持ちより、色々な競技を見られてよかったという気持ちのほうが強くて。早く次の日にならないかなあと（笑）。落ち込んでいたのは入院中だけかもしれません。1人の時間が長かったので泣いちゃうこともあったし、テンションが下がる時期もありました。でもグラウンドに戻ってきたら、チームの仲間もすごく頑張っているので励まされるし、退院してからずっと気持ちは上がったままですね」

一歩ずつケガ以前のコンディションに戻すべくトレーニングを積んでいる青山　©Shigeki Yamamoto

　きっと他人には図れないほど苦しく、複雑な思いもあったはずだ。それでも逆境を悲観せず、現状をポジティブに変換する強さが彼女にはある。

リハビリの過程はテレビの密着取材で記録

　リハビリの過程を記録に残したことも、その前向きな姿勢を後押ししたようだ。伊東氏の勧めで、術後から復帰に至るまでの全過程において、読売テレビのドキュメンタリー番組『あすリートチャンネル』の密着取材を受けた。

　着想を得たのは、青山と同じく左膝の前十字靭帯再建手術をした中日ドラゴンズ・石川昂弥のリハビリを追った球団公式YouTubeだったという。

「伊東先生と『同じ怪我をした方に役立ててもらおう』という話になったんです。実際に番組を見てくださった方の中には同じ怪我をされた方もいて、『いつも経過を見ることで本当に頑張れています』というメッセージをもらうこともありました。私自身、すごくモチベーションになったし、撮られているからこそ色んなことを意識しながらトレーニングに臨めたと思っています」

密着番組の取材を受けることでモチベーションの維持にも繋がったという　©Shigeki Yamamoto

　注目を力に変える。そんな青山の特性を理解している伊東氏ならではの判断だったのだろう。

　長いリハビリ期間を経て10月8日、約半年ぶりにトラックに現れたその姿も青山らしかった。日本選手権リレーの“余興”である仮装リレー。人気キャラクターの着ぐるみに身を包んだ青山は、第4走者として国立競技場のトラックを駆け抜けた。

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