「日本人があの舞台にたどりつくために必要なのは…」 “NFLに最も近づいた選手”が語った「身体能力でも、英語でもない」ある要素とは？

　いまから10年ほど前のことだっただろうか。インターネット上の某大型匿名掲示板サイトで、こんなスレッドが立っていた。

「日本人のスポーツ偉業難易度」

　要はこれまで日本人が成し遂げていないスポーツ界での偉業をランキング順で並べたもので、それを肴にスポーツファンたちが喧々諤々の議論を交わしていた。

　そこには例えば、こんな言葉が躍っていたと記憶している。

「NBAでレギュラー」「テニスのグランドスラム優勝」「ボクシングのヘビー級王者」「陸上競技の短距離種目で金メダル」「MLBで本塁打王」などなど――。

　いずれも当時は日本人には夢物語だと思われていたからこそ、こういった議題が成立していたわけだ。

　ところがそれから月日が経ち、日本のスポーツ界は大きく様変わりを見せた。

現在レイカーズで活躍する八村塁はドラフト1巡目指名だった　©BUNGEISHUNJU

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　NBAでは八村塁と渡邊雄太が堂々とレギュラークラスの活躍を見せ、テニスでは大坂なおみがグランドスラムを4度制覇。錦織圭も準優勝までたどり着いた。米メディアのPFPランキングでは井上尚弥が1位を獲得し、MLBで大谷翔平はホームラン王を独走している。陸上競技の100ｍ走では9秒台の選手が続々と誕生し、リオ五輪ではリレーとはいえ銀メダルも獲得している。

　そんな風に日本人選手のレベルアップが著しい一方で、一向に達成への兆しが見えないものもいくつか書かれていた。その中のひとつに「NFLレギュラー」というものもあった。

”日本人NFL選手”誕生の可能性は……？

　これまで日本人アメリカンフットボーラーの中でNFLに最も近づいたのは、2007年と2008年にアトランタ・ファルコンズのサマーキャンプに招待された木下典明だろう。特に2007年時は、他のアメリカ人選手たちと同様の土俵で本契約を懸けた選考だった。

　昨季限りで現役引退を表明した木下本人が当時を振り返る。

”NFLに最も近づいた日本人”である木下さん　©Kanta Takeuchi

「7月から1カ月間チームのサマーキャンプとプレシーズンゲームに参加して、そこで結果を残せるかどうか。結果が出せればロスター入りか、プラクティススクワッド（練習生）としてチームに残るというものでした」

　練習生とは、シーズン中に故障者が出たり、上層部が「使ってみよう」と思った時にはすぐロスターに上がれる立場だ。NPBの育成契約に近い立ち位置だろうか。当時の契約では練習生でもシーズン通して帯同できれば1000万円以上のサラリーになった。マイナースポーツの域を出ない日本での待遇と比べれば、破格の契約と言ってよい。

「それだけに“ファミリー”になれるのはシーズンに入ってから。キャンプ中はみんながライバル。練習からバチバチで気が休まる瞬間が全然なかったですね」

　結果的に木下はシーズン前の最後の最後でカットされNFL本シーズンの舞台を踏むことは出来なかったが、その頂を目の当たりにしたのは間違いないだろう。では、そんなパイオニアはNFLという世界をどんなふうに受け止めたのだろうか。そして、日本人初のNFL選手誕生の可能性はあるのだろうか？

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