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中日“ほぼ決まっていた”中村剛也ドラフト1巡目指名…星野仙一は賛成もなぜ消えた? 割れた意見「俺はよう使わんよ」「自分の言い方も悪かった」
text by
中田宗男Muneo Nakata
photograph byJIJI PRESS
posted2023/10/21 11:03
いずれ球界を代表するスラッガーに成長する中村剛也(西武/写真は2001年入団発表時)
シーズンが終盤にさしかかった頃、「予定通り1巡目は中村でいきます」と星野さんに最終確認を取りに行くと、そこで思いがけずストップをかけられた。星野さんは右手で首元を切る仕草をしてこう言った。
「いや、ちょっと待て。俺はコレや」
星野さんはこの年限りで監督を退き、後任は当時ヘッドコーチ兼投手コーチを務めていた山田さんだという。
「悪いけど、山田と相談してくれ」
やむを得ず、私は後日、山田さんのもとを尋ねた。
「中村? 誰それ?」
山田さんには、これまでの星野さんとのやりとり、経緯などを伝え「中村を1巡目でいこうと思っています」と説明した。山田さんは私の話を聞き終わるとこう言った。
「中村? 誰それ?」
大阪桐蔭高はまだ全盛期前夜。甲子園にも出ていない中村のことを山田さんが知らないのも無理はない。山田さんは続けてこう言った。
「寺原(隼人/日南学園高)でいってよ」
寺原は夏の甲子園で剛速球をズバズバ投げ込んでいた注目の高校生ピッチャーだった。だが、中日スカウト陣の評価はそこまで高くはなかった。
「ボールは確かに速いですけどちょっと棒球気味ですし、時間もかかるタイプですよ」
私がそう話すと、「いやそんなことはない。俺が甲子園で見た中では一番魅力を感じる」と山田さんも譲らない。
私はそれでも中村の魅力や中日打撃陣の現状、将来のことなどを話して中村を推した。
決定打になった「俺はよう使わんよ」
「どこ守れるの?」と聞く山田さんに、「いまはファーストしか守っていないですけど、我慢して使えばサードもできるようになると思います」と話すと、山田さんはこう言った。
「そんな我慢して使わないといけない高校生を獲ってきても、俺はよう使わんよ」
山田さんは続けた。
「高校生の野手を獲るならキャッチャーを獲ってよ。キャッチャーはなんぼいてもいいから」
ドラフトでは結局、山田さんの希望を受け入れる形で1巡目指名は寺原になったが、4球団競合の末に交渉権はダイエーが獲得した。