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ドラフト有力投手は大学生が目白押し! ナンバー1は「投げる哲学者」…注目は数字以上の“投球術”にアリ 2023年ドラフト目玉候補《投手ベスト3》
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byJIJI PRESS
posted2023/10/23 11:00
ドラフト目玉ベスト3 投手編【1】明治大・村田賢一投手(181cm90kg・右投右打)
この草加投手、創志学園高時代の3年春にその全力投球を受けている。
当時、同校のエースだった西純矢投手(現・阪神)のボールを受ける取材だったが、ミットの中の手のひらの骨がきしむような西投手の剛速球を受けたあとに、長澤宏行監督(当時、現篠山産業高監督)が、「こっちのピッチャーも負けてないですから、ぜひ受けてやってください」とブルペンに連れてきてくれたのが、草加投手だった。
「きれいなバックスピンで空気を切り裂く快速球」
うなるような剛球の西投手とは正反対の、きれいなバックスピンの空気を切り裂くような快速球。受けたミットが、パチーンと跳ね上げられるような、ホップ成分抜群のボールの勢いにまず驚いた。
見るからにコントロールの良さそうな端正なオーバーハンド。そのコントロールが、構えたミットを動かさない。右打者の外角低めに構えたミットを、テークバックのあたりでスッとさらに外に動かしても、平気で「そこ」にきめてきたから驚いた。
スリムな長身、色白の細おもて。話し方もおっとりとおだやかで、笑った顔が弱々しく見えるほど優しい。
「今はあいつ(西純矢)がエースですけど、大学でもっと鍛えて、卒業する頃には自分のほうが上になってやるんで」
そのわりに、語る中身には迫力があった。
進学先が亜細亜大と聞いて、「大丈夫かな……」と心配だった。野球部の日常の厳しさは、音に聞こえていたからだ。
昨年、草加勝3年生のリーグ戦で、エース・青山美夏人(現・西武)と共に神宮のマウンドで仁王立ちし、亜細亜大の奮闘を支える姿を見た。とんでもない思い違いをしていたと、反省した。
そして、今季。亜細亜大の絶対的エースとして、志願のリリーフで連投のマウンドにも上がっていった草加勝。
笑うと柔和なその表情はちっとも変わってないが、エースとしてチームを担う土性骨は、立派な「さむらい」になっていた。
<捕手編に続く>