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横浜高“あの悲劇の天才ショート”緒方漣がいま明かす神奈川大会決勝「1週間ぐらい家から出られませんでした」絶望のち歓喜「緒方、受かったぞ!」
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byKei Nakamura
posted2023/10/13 11:02
今夏、横浜高野球部をキャプテンとして率いた緒方漣
緒方 僕は選抜(代表校の)発表のときは、自分が日本代表に選ばれたときより、選ばれる確率は高いと思っていたんです。なので、あのときは、けっこう気持ちが落ちましたね。
U-18日本代表入りの瞬間
――ちなみに代表メンバー入りが正式に決まったのは、いつ頃なんですか。
緒方 8月22日に新聞等では発表になったと思うのですが、僕らに伝えられたのは17日です。夕方ぐらいに村田(浩明)監督のもとに連絡があるというので、練習が終わっても残っとけと言われていて。
――ああいうのはずいぶん前に、内々に「選ばれるらしいぞ」みたいに言われてたりするものなのですか。
緒方 いや、ぜんぜん。
――本当にわからないのですか。
緒方 まったく。ただ、候補合宿には呼ばれていましたし、そこでショートとセカンドを守って、複数ポジションをこなせることをアピールできたという自信はあったんです。そこは武器になるな、みたいなことは言ってくれていたみたいで。
――やはり発表当日は、ドキドキしましたか。
緒方 夏の大会が終わって、1週間くらい過ぎたころに、代表に選ばれるかもしれないからと思って、練習を再開したんです。わずかな望みだと思いながらも。これからも野球を続けるからとかではなく、そのときのモチベーションは代表選出しかなかった。なので、落ちたらどうしようってずっと考えていました。発表のとき、室内練習場にいたんですけど、マネージャーに呼ばれて。外に出たら、監督さんが代表のユニフォームを持って、スキップみたいな感じでこちらに向かって来ていて。うきうき(した表情)で「緒方、受かったぞ!」と。マジか! って思いましたね。
――なぜ、日本代表のユニフォームを持っていたのですか。
緒方 監督がスポーツ店の人にレプリカを借りてくれていたみたいです。そのユニフォームを「着ろ」って言われて。その場で着て、後輩たちに胴上げしてもらって、みんなで記念撮影をしました。素直に嬉しかったですね。
――ということは、さすがにまだユニフォームに名前までは入っていなかったわけですね。
緒方 松井裕樹(楽天)さんの名前が入っていました。お店に飾られていたものだったんですかね?
〈つづく〉