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横浜高“あの悲劇の天才ショート”緒方漣がいま明かす神奈川大会決勝「1週間ぐらい家から出られませんでした」絶望のち歓喜「緒方、受かったぞ!」
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byKei Nakamura
posted2023/10/13 11:02
今夏、横浜高野球部をキャプテンとして率いた緒方漣
緒方 (逆転3ランを)打たれた瞬間のことは、あまり覚えていないんです。でも、打球が上がって、自分が打球を目で追ってたときの感じは鮮明に覚えています。最初、レフトが追いつくかなと思ったんですけど、レフトがフェンスにたどり着いてからも見上げていたんです。やべえ、いったわ、って。そこで一気に何かがのしかかってきたような感じになりました。もう体にぜんぜん力が入らなくて。
「1週間ぐらい家から出られませんでした」
――試合後、やはり自分を責めてしまったと思うのですが。
緒方 引き摺りましたね。翌日も高校に行ったんですけど、寮の部屋を掃除したな、ぐらいしか記憶がないんです。それからも決勝戦のことはずっと頭から離れなくて。川崎の実家に帰ってからは、1週間ぐらい家から出られませんでした。居間のテレビで甲子園の試合とか観ちゃうと、けっこう、あの場面がフラッシュバックしちゃって。そうしたら、自分の部屋に戻ったりしていました。
――よく甲子園の試合を観ることができましたね。
緒方 少しは観ました。ただ、観ていてもポカーンという感じでしたね。
東恩納蒼と決勝観戦…「あいつら、マジで打つわ」
――慶応と仙台育英の決勝は?
緒方 あの日、ちょうどU-18日本代表の招集日だったんです。顔を合わせて、ユニフォームとかをもらって。そのあとは自由行動だったので、ホテルの部屋で最終回ぐらいは観ました。ああ、慶応が優勝か、みたいな感じで。今年の慶応は打線は本当にすごかったんで、やっぱ強かったんだな、と思いましたね。沖縄尚学の東恩納(蒼)と一緒に観ていたんですけど、東恩納も(甲子園の準々決勝で慶応と対戦し)6回に一気に打たれて。「あいつら、マジで打つわ」みたいな感じのことを言っていました。打線は本当に強力でしたね。
――横浜は前年秋の神奈川大会の決勝でも慶応と対戦していて、そのときは勝ったものの、その後の関東大会の結果で、慶応(関東大会ベスト4)は選抜に出場し、横浜(関東大会ベスト8)は選ばれませんでした。本当にこの1年は、ある意味、慶応に水をあけられ続けたわけですよね。