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「細かく厳しいが、ミスは追及しない」男子バレー・ブラン監督は日本をどう強くした? “右腕”伊藤コーチの証言「一緒に仕事ができて幸せ」
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byYuki Suenaga
posted2023/10/08 17:37
2017年に日本代表コーチ就任、2021年東京五輪後から監督に昇格したフィリップ・ブラン(63歳)。見事にチームをパリ五輪へ導いた
スロベニア戦第3セット、石川のスパイクで24-17とマッチポイントを握ると、ずっとコートサイドに立っていたブラン監督はいったんベンチに戻り、気持ちを落ち着かせるかのようにペットボトルの水を口に含んだ。
再びコートサイドに立つと、24-18から相手のサーブがアウトになるのを見届け、両腕を掲げた。
ベンチから飛び出したスタッフ陣にもみくちゃにされながら、笑顔で選手の歓喜の輪に加わり、ホッとしたように目を潤ませた。
「今日どうしても切符を獲りたかった。スタッフのみんなも毎日夜遅くまで働いて、疲労が溜まりに溜まっていたので、今日獲得することが重要なキーでした」
パリ五輪については、これまでも選手たちからは「メダル」という言葉が出ていたが、指揮官はあくまでも「まずは出場権を獲ること」と言い続けていた。
その目標を達成した夜、パリ五輪でのメダルについて聞かれると、言った。
「今年の3大会(ネーションズリーグ、アジア選手権、パリ五輪予選)を勝ち抜いたことは、日本にもその資格があるという証明になったと思います」
大風呂敷は広げない指揮官が、静かに自信を漂わせた。