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「細かく厳しいが、ミスは追及しない」男子バレー・ブラン監督は日本をどう強くした? “右腕”伊藤コーチの証言「一緒に仕事ができて幸せ」
posted2023/10/08 17:37
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
Yuki Suenaga
「私たちは今夜、夢をつかんだ。素晴らしいバレーボールができた」
日本代表監督として、今年最大のミッションであった“パリ五輪出場権獲得”を果たしたフィリップ・ブランは、安堵の表情で言った。
9月30日に開幕したパリ五輪予選は、第2戦で格下のエジプトに敗れる苦しい戦いとなったが、その後は見事に立て直し連勝。第6戦でスロベニアを3-0で下し、最終日のアメリカ戦を残して、日本は4大会ぶりに五輪予選で出場権を獲得した(東京五輪は開催国枠で出場)。
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主将の石川祐希(パワーバレー・ミラノ)は「パリ五輪ではメダルを狙う」と決意を語った。
選手たちは当然のように“メダル”に照準を定め、迷いなく口にする。実際に今夏のネーションズリーグで、主要な世界大会では46年ぶりとなるメダルを獲得し、現在の世界ランキングは4位である。
ブランがもたらした“変化”とは?
今年何度も話題になってきたことだが、なぜ世界で勝てなかった日本男子バレーがこれほど強くなったのか。
石川を筆頭に海外リーグでプレー経験を積んだ選手が増えて個々の力が格段に向上し、そうした強い個を活かすブラン監督の戦術もうまく噛み合っている。
中垣内祐一前監督のもと、2017年にコーチとして招聘されたブランが、最初にもたらした変化は、ミドルブロッカーの得点力アップだった。それまでの日本はミドルの得点力が低く、攻撃がサイドに偏るのが課題だったが、ブランはセンターエリアからの攻撃を増やす意識を選手たちに植え付けた。
ミドルを軸とした攻撃を武器に東レアローズを2016-17シーズンのVリーグ優勝に導いたセッター藤井直伸を重用し、藤井は起用に応えクイックを大胆に使うトス回しで日本の攻撃を大きく変え、勝利に導いた。チーム内外に対し、「これからの日本はこうやって戦っていくんだ」という明確な意思表示となり、Vリーグ各チームのセッターも積極的にクイックを使うようになった。
2018年に2年ぶりに代表に合流したセッター関田誠大(ジェイテクトSTINGS)も、もともと中央からの攻撃を得意としていたがさらにその意識を高め、パイプ攻撃も巧みに絡めて的を絞らせないトス回しを磨いた。
また、ブランはブロックとディグのシステムを緻密に構築した。細かいシチュエーションごとに、「ブロックはこのコースを締めて、ディグはここに入る」という約束事を、口酸っぱく指摘しながら徹底。それが年々精度を増している。