ブランは冷静と情熱を併せ持つ指揮官でもある。

　自身の構想に合わなかったり有望な若手が出てくれば、功労者であっても容赦なくメンバーから外すというシビアな顔もある。今年も、ネーションズリーグで深津旭弘（東京グレートベアーズ）や永露元稀（ウルフドッグス名古屋）がセカンドセッターとしてチームを支え銅メダル獲得に貢献したが、8月のアジア選手権や今回のパリ五輪予選では初代表の23歳・山本龍（ディナモ・ブカレスト）を抜擢した。

　その一方で、情に厚く感情豊かな面も。今年のネーションズリーグでは西田有志（パナソニック）が本調子ではなかったが、「Vリーグ中に体調不良などであまりプレーできていなかったので、100％に戻すには長い時間がかかるもの」と辛抱強く起用しながら復調に導いた。

　西田は「身近にずっと寄り添って、選手一人一人をよく見てくださっている。ここをもう少しこうしたらもっとよくなる、といつもプラスに考えさせてくれるような話し方をしてくれる」と言う。

©︎Yuki Suenaga

　選手に対する要求は細かく厳しいが、ミスを追及するより、いいプレーを褒め、どうしたらよくなるのかを共に考えるスタンスのため、選手はミスを恐れずプレーできている。

“世界3位”ブラン監督だけ号泣

　ネーションズリーグで3位決定戦に勝利し銅メダルを獲得した瞬間、選手たちはみな笑顔だったが、ブラン監督だけは号泣していた。

　パリ五輪予選の前にそのシーンについて尋ねると、こう話していた。

ネーションズリーグで3位に輝き、高橋藍（左）とハグするブラン監督　©︎FIVB

「あれは大事な瞬間だった。目標はトップ4でしたが、イタリア相手にメダルを勝ち取ることができたので、非常に感情が高ぶりました。なぜなら選手もスタッフも全員がハードワークをして、成功を収めたから。選手、スタッフとその勝利を分かち合うことができ、とても誇りに思いましたし、非常に嬉しかった」

　冗談半分に、「ああいう勝利の後にも感情的にならないような人間になってしまったら、もう監督をやるべきじゃないなと思う」と笑って、こう続けた。

「パリ五輪予選で勝って切符を獲ることができたら、またいろいろな感情があふれ出るでしょう。またそれを味わいたいですね」

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