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競馬PRESSBACK NUMBER
実は大健闘「ルメール騎乗の日本馬スルーセブンシーズ4着」を目の前で見た「主な勝ち鞍はGIIIだけど…世界を驚かせた!」
text by
大川慎太郎Shintaro Okawa
photograph byJIJI PRESS
posted2023/10/08 17:01
凱旋門賞4着と大健闘したクリストフ・ルメール騎乗のスルーセブンシーズ
騎手が馬の背を跨ぐと、ファンから声援がかかる。クリスチャン! の声が大きい。1番人気に騎乗するデムーロだ。フランキー! の声もよくかかる。今年で凱旋門賞の騎乗が最後だというデットーリだ。スルーセブンシーズが通った時に、私は一言だけ「頑張れ!」と叫んだ。そう言わずにはいられなかった。
パドックが終わると同時にスタンドのゴール前へ向かう。人がごった返していて、なかなか進まない。着物姿の日本人女性が目に入った。なんとか前から4列目に陣取る。途端にクイーンの『ウィー・ウィル・ロック・ユー』が大音量で流れ始めた。
ドンドンパン! ドンドンパン!
あまりに有名すぎるサビの部分を観衆が大合唱する。魔術的な高揚感に包まれる。
ゲート入りも1頭ずつ、無理強いせずに
ついにゲートインだ。すると周囲の日本人が、「スルーセブンシーズ!」と叫んだ。
七つの海を超えて――。
父のドリームジャーニーと、母のマイティスルーの馬名のニュアンスを受け継いでいる。なんて素敵な名前だろう。海を超えて、まだ見ぬ世界へ挑むのだ。
海外競馬はゲート入りの時間が長い。一頭一頭、時間をかけて入れるからだ。日本のように複数頭を同時にゲートに入れればもっと早くスタートできると思うが、慌てて無理強いしないのがフランスである。人は並ぶのを厭わないし、ゆったりとした時間を好む。
スタート! ターフビジョンでは、ややスタートで後手を踏んだように見えた。スルーセブンシーズの姿を確認するので精一杯だが、後ろから3頭目くらいを走っているようだ。位置取りの良し悪しは私にはわからない。とにかく大事なのは折り合いと、自分のペースで走ることだろう。うん、悪くない。ロンシャンの2400メートルはコーナーが2つ。直線は長いので慌てる必要はない。
「来た!差せ!」しかしエースインパクトが強かった
自分の心臓の鼓動が激しくなっている。フォルスストレート(偽りの直線)を過ぎ、いよいよ最後の直線へ。相変わらずスルーセブンシーズの位置は後ろだが、少し外へ持ち出したようにも見えた。直線に入り、観衆が思い思いに叫ぶ。だが私は声が出ない。息を呑むとはこのことだ。前が詰まったように見えた。やはり厳しいのか。
いや、内に誘導されたスルーセブンシーズが少しずつ伸びてくる。