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競馬PRESSBACK NUMBER
実は大健闘「ルメール騎乗の日本馬スルーセブンシーズ4着」を目の前で見た「主な勝ち鞍はGIIIだけど…世界を驚かせた!」
posted2023/10/08 17:01
text by
大川慎太郎Shintaro Okawa
photograph by
JIJI PRESS
2レースが終わったのを見て、パドックの最前列に向かった。凱旋門賞は4レース目。どうしてもスルーセブンシーズを間近で観たかったからだ。
日の丸の旗を持ったファンがいる。右隣のいかしたフランス人らしきオジサンが「ジャポネ」と漏らしたのを聞き逃さなかった。フランス語はあまり理解できないが、どうやらチャンスがあるのではないか、という雰囲気の話をしている。左隣の洗練された物腰の淑女がシャンパンを片手にパドックを眺めている。洒落た帽子がよく似合う。
日本とフランスの競馬文化の違いを感じた瞬間
日本と違って、カメラを構えるファンが最前列を陣取ることはない。こちらは競馬場は社交の場なのだ。そもそも馬や騎手をアイドル視するような文化はフランスにはない。単勝馬券にもスルーセブンシーズの名前はない。そこが日本との大きな違いで、馬の名前が入った単勝馬券を喜ぶのは日本独特だ。だからこそ日本の競馬は世界的にも比類なき成功を収めている。
きっと世界の競馬関係者も日本競馬を研究したはずだが、制度だけを真似しても成功は難しいと思ったのではないか。関係者の努力はもちろん、日本人の国民性によるところも大きいのである。
強烈な日差しを出走表で避けていると、尾関知人調教師が厩務員と一緒にパドックを歩いてきた。穏やかな引き締まった表情で、やることはやったという様子が窺えた。
デムーロ、デットーリに向けての掛け声も
待つこと30分。馬番号と勝負服が記されたプレートを掲げる係員の後ろにそれぞれの騎手が続く。ルメールの表情は落ち着き払っている。
胸が高鳴ってきた。そしてついに凱旋門賞に出走する栄えある15頭が登場する。9番はどこだ! 待ちきれない。来た! スルーセブンシーズだ。私が馬体を見たところで調子はわからないが、ピカピカに輝いていることはわかった。関係者の苦労が偲ばれる。旅行で来るだけでも大変なのに、普段以上の仕事を求められているのだ。