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31歳で監督に電撃転身…“寺田交差点”寺田夏生は、三重の皇學館大学から箱根駅伝を目指す「関東の強豪校と一緒に走れる、またとない機会」 

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小堀隆司

小堀隆司Takashi Kohori

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photograph byTadashi Hosoda

posted2023/10/09 06:02

31歳で監督に電撃転身…“寺田交差点”寺田夏生は、三重の皇學館大学から箱根駅伝を目指す「関東の強豪校と一緒に走れる、またとない機会」<Number Web> photograph by Tadashi Hosoda

現在32歳の寺田夏生、選手たち先頭で引っ張り走るなど練習を先導している。その姿は現役さながらだが、指導について取材をすると…

「さすがにちょっとレベルが違うので、頑張って1区の子がどこまでやれるかですね。じつは、宿舎が同じみたいなんですよ。皇學館が初出場を果たした5年前くらいからずっと同じ宿みたいで。まあ、相手も母校の後輩だし、ちょっと不思議な気分です」

 現場で指導に当たって2カ月余り、徐々にチームの課題が見えてきた。スピードはわりとあるが、全体的にスタミナ不足。チームにはトレーナーもいないため、学生たちは定期的なボディチェックも受けていなかった。

「理想の指導者は?」への答え

 いわば強豪校であれば当たり前に備えている環境がまだ十分に整備されていないのだ。裏を返せばそれは、彼らにはそれだけ伸びしろがあるということだろう。

「最近の子はスピード練習が好きなんですかね。でもスピードを生かすのも、土台にスタミナがあってこそなので。長い距離に対する苦手意識をなくして、まずは基礎的な部分をしっかり作っていこうと考えています。

 ここに来た当初は、主力の子たちですら治療に行ったことがないと話していて、ちょっとくらい違和感があっても『寝れば治るでしょ』って感覚でやってきたみたいです。それも今は、週に一度トレーナーの方を呼んで治療を受けさせたり、超音波をレンタルしてお互いにセルフマッサージをやらせたり、少しずつ改善してきています。一度治療院に連れて行っただけで調子が戻ってくる選手もいたので、休み方もちゃんと教えて、うまく練習に強弱をつけてやっていきたいですね」

 上から押さえつけるのではなく、学生たちと話し合いを重ねながら、丁寧に指導している様子が伝わってくる。他にコーチもいない環境だが、誰か参考にしたり、理想とする指導者像はあるのだろうか。即答だった。

「前田(康弘)監督ですね。あれだけフレンドリーなのにメリハリがあって、言うべき時にはしっかり言う。すごいなと思います。本当に選手の扱いが上手くて、選手一人ひとりの個性に合わせて声がけとかも変えているので。強めに言ったり、逆にちょっと優しく接したり。もっと自分も経験を積んで、話のうまさとかも見習いたいですね」

まずは好きなようにやってみな

 その恩師には、折に触れて様々な相談事をしてきた。もっとも多いのは、学生たちへのアプローチの仕方だと言うが、中でも印象に残っているのがこんな言葉だ。

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