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箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
31歳で監督に電撃転身…“寺田交差点”寺田夏生は、三重の皇學館大学から箱根駅伝を目指す「関東の強豪校と一緒に走れる、またとない機会」
text by
小堀隆司Takashi Kohori
photograph byTadashi Hosoda
posted2023/10/09 06:02
現在32歳の寺田夏生、選手たち先頭で引っ張り走るなど練習を先導している。その姿は現役さながらだが、指導について取材をすると…
「『お前は優しすぎるからもっとメリハリをつけろ』と。『でも現場に一人か、しっかり計画を立てなきゃな』って。本当は監督とコーチがいれば、どちらかがちょっと厳しめにして、どちらかが優しくフォローしてバランスを取るようです。うちは練習からスカウトまで全部自分一人なので。最後は『まあ寺田が監督なんだから、まずは好きなようにやってみな』と言われました」
「好き」を仕事にしても、楽しいことばかりとは限らない。悩み、苦しみ、絶望に打ちひしがれる日もあるはずだ。それでも続けていればいつか笑える日が来ると、恩師はそう伝えたかったのだろう。
僕も5000m15分切りくらいなら余裕で引っ張れます
約10年に及んだ実業団時代、度重なるケガに悩まされながらも、マラソンで活躍する夢を諦めなかった。2020年の福岡マラソンでは自己ベストとなる2時間8分3秒をマークし、3位入賞を果たした。チーム最年長となっても自己記録の更新を目指したが、最後の2年間はほとんど故障で走れずにシューズを脱いだ。
華々しい活躍と、苦しい日々の両方を知る若き指導者は、学生たちを強くするための手段として、こんな青写真を思い描く。
「第一線では難しいんですけど、まだまだ僕も走れるので。5000m15分切りくらいなら余裕で引っ張れますし、三重の大会で学生たちに自信をつけさせて、ゆくゆくは関東の記録会にも連れて行きたいなと思います」
教えられることはたくさんある
続けて、こんな思いを語った。
「結局、日本代表にはなれませんでしたけど、一つひとつやるべきことを積み重ねて結果を出してきたと自分では思っているので。失礼ながら、関東の大学に行くまでの実力が発揮できなかった子たちに、教えられることはたくさんあると思ってます。そういう子たちに少しでも力をつけてもらって、出雲とか全日本で、高校時代に勝てなかった選手相手に勝ってほしい。それが一番の楽しみというか……。僕もあまり注目されるのが好きではないので、学生たちには早く強くなって、チームやお前たちが注目されるようになれよって、いつも話してますね」
この熱意が実を結ぶ日が、きっとそう遠くないうちに来ることだろう。まずは嘱託契約を一年でも長く更新できるように。新監督の初陣である出雲駅伝が、もう間近に迫っている。
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