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「ノックを受けるのも難しく…」守備の名手・藤田一也は二遊間にこだわり、引退を決めた 本人が明かす「23回の胴上げは僕から」「去年のCSは…」
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byJIJI PRESS
posted2023/10/02 11:03
9月27日の引退セレモニーでファンに別れを告げる藤田。その数日後、引退に至るまでの思いを赤裸々に語ってくれた
「いろんな思いがありますけど、まだまだ一日でも長く一緒にやるために、勝っていかないといけないですし、チーム全体がそういう気持ちですよ、一日でも長く」
永遠にはつづくことのない時間ではあるが、25年ぶりとなる悲願の日本一を掴むその日まで、オールベイスターズで藤田と一緒に戦う覚悟はできている。
23回の胴上げは藤田の提案だった
そういえば気になっていたのが、引退セレモニーでの“23回の胴上げ”だ。背番号23にちなんだものだということはわかるが、それにしたって前代未聞のあの回数、一体誰が発案したのだろうか?
「ああ、あれは僕からなんですよ」
そう言うと藤田は愉快な様子で笑った。
「胴上げ前に、みんなが『何回行く?』みたいな感じで、僕は楽天時代に背番号6だったんで『6回かな』って雰囲気だったんですけど、『それやったら低くてもいいから23回やってよ!』ってお願いしたんですよ。そしたら(大田)泰示が『若い選手、全員前に来い~!』って号令をかけてくれて、普通の胴上げを23回してくれました」
このメンバーで最後、良かったねって終わりたい
2年前、DeNAに10年ぶりに復帰するとき、旧知の選手は田中健二朗くらいしかおらず、馴染めるかちょっと不安だったというが、ハマの戦士ならではの、風通しのいい、明るくノリがいい素晴らしいチームメイトに恵まれた。
「いい意味で気を遣ってくれないというか、本当は気を遣ってくれていたと思うけど、それを見せないというか、普通に接してくれてすごくうれしかったんですよ。試合に勝ったらロッカーで盛り上がるし、野手会でもドンチャン騒ぎだし、そういう姿を見るたび、いい仲間に巡り合えたなって」
座右の銘は『一期一会』。柔らかい表情を浮かべ藤田はつづける。
「だから本当、このメンバーで最後、良かったねって終わりたいんですよ。日本一を成し遂げることができたら、本当どんな盛り上がりをするんだろうって」
学生時代に入団したいと熱望し、ベイスターズの一員となり、紆余曲折を経て、いよいよエンディングの時を迎えようとしている。厳しい戦いが待っているが、ユニフォームを脱ぐその日まで、野球人・藤田一也の最後の奮闘から目が離せない。