月刊スポーツ新聞時評BACK NUMBER
中日ドラゴンズ「令和の米騒動」はなぜ大きな話題になったのか?「スパイ映画のような描写」の新聞報道から感じた“立浪和義監督の苦悩”
posted2023/10/02 17:00
text by
プチ鹿島Petit Kashima
photograph by
JIJI PRESS
セ・リーグは阪神、パ・リーグはオリックスが優勝。さぁクライマックスシリーズはどこが上がってくる? というのが9月のプロ野球でした。一方でそうした風景とは別に注目してしまう球団があった。中日ドラゴンズです。なんといってもアレです。阪神の優勝ではなく「令和の米騒動」のことだ。
8月下旬以降、中日は好事家たちの視線を独占していたと言ってもいい。我が「月刊スポーツ新聞時評」としてもスルーできない。では報道の経緯をおさらいする。夕刊フジが8月23日に報じた「令和の米騒動」は立浪和義監督が突如、炊飯器を撤去し白米の提供を禁じたというものだった。細川成也外野手が夏場に入り調子が落ちてくると、
《「立浪監督は『ご飯の食べ過ぎで動きが鈍くなったからだ』と考え、改善策としてご飯の準備をやめさせた。そうしたら成績がまた上がってきたから、他の選手も…となった」とチーム関係者。》(夕刊フジ)
しかし絶対的守護神のライデル・マルティネスの抗議により投手陣のみ翌日から提供が再開された。
夕刊フジは「この時代に白米がしっかり食べられないなんて夢にも思わなかった。しかも、同じチーム内で食べられる人とそうでない人がいる。もはや『令和の米騒動』ですよ」という選手のコメントを載せた。この時期の中日は「64年ぶり敵地13連敗」の頃であり、選手たちに元気がないのは令和の米騒動のせいかもしれないという。
心を掴まれた「スパイ映画のような描写」
この記事が話題になって夕刊フジは張り切ったのか9月になって続報を載せた。それが
『中日「令和の米騒動」終息せず』『”おいしい発注ミス”でカレーライス解禁も1日限り』(9月12日付)である。
小さなおにぎり以外の米飯を禁じられたまま1カ月が経過とある。しかも野手だけでなく球団フロントや裏方のスタッフまで。私が食い入るように読んでしまったのが次のコメントだ。
「球団幹部がおにぎりを何個かどんぶりに入れ、その上に牛丼の“アタマ”を乗せて食べているのを見た。おにぎりを何個も食べていると監督に密告されかねないので、1個ずつロッカーに持ち込んでから味噌汁と一緒にまとめて食べる用心深い選手もいる」(ある選手)
思わず息をのむ。スパイ映画のような描写にドキドキした。
そしてこの間にあったのが“発注ミス”事件(8月22日)。普段と違う球場(京セラドーム大阪)のためかケータリング業者に立浪監督の指示がちゃんと伝わってなかったようで「全選手にカレーライスが提供された」という。なんという奇跡。この日は阪神相手に延長10回サヨナラ負け。もし勝っていたらゲンを担いで翌日もカレーが出たのでは? とも。よく読むとこのエピソードは約1カ月前の話なので令和の米騒動記事が話題になって気を良くした記者がさらに聞きこんでいたのであろう。