「滑っていて、気持ちが入り込んでいくプログラムなので、小さいころからの、私のスケートへの思いを曲にこめて滑っています。今日はちょっと上手くいかなかったけれど、（次の試合では）もっとお客さんに向けて、ジャンプの失敗とか成功にとらわれずに、自分らしく演技したいと思っています」

　点数は、41.80点での17位発進。残念な気持ちを受け入れるように、口を開く。

東京選手権ショートは17位　©︎Asami Enomoto

「小さいころに比べると、試合となるとすごく弱い部分が全面的に出てきて、自信がなくなっているなと、滑っていて感じることも増えました。試合というものは何回も経験してきましたが、毎回本当に、競技でしか味わえない気持ちがあります。自分との戦いですね」

　そういって、小さく笑った。

フリーは明るい曲調の「リトルマーメイド」

　今の自分を、葛藤も含めてそのまま表現するショートに対して、フリーは明るい曲調を選んだ。そのきっかけになったのは、夏に出演したアイスショー「ワンピース・オン・アイス」だった。

　1つの物語をスケーター全員で演じる舞台。ヒロイン・ビビ役の本田はセリフもある。スケーターとしてだけでなく、女優としての資質も必要とされる時間を経験した。

「自分以外の何かになりきって、皆さんの前でスケート出来たことが、自信を取り戻させてもらえたきっかけになりました。誰かを演じるというのは、滑っていて強さをもらえるんだなというのが、自分のスケートとして大きな学び。お客様に見せるんだという気持ちを、思い出す部分がありました」

　自分以外の役になりきることで、自信のかけらを手に入れた本田。その気持が、新しいフリー『リトルマーメード』へとつながった。

「もともとは昨季のフリープログラムを練習していたんですが、『リトルマーメード』の曲で滑ってみたいなと思ったんです。（アニメの）映画は小さいころから知っていますし、最近の実写版の映画も見て、自分の中で『これをスケートで滑ったら、どんな自分が見せられるかな』と、すぐに想像できました。自分の中で曲の組み合わせも考えてみたら、自分が試合でスケートする姿が、すぐに頭の中に浮かんだんです」

本田真凜が“一番見て欲しいところ”

　8月の横浜公演のあと、9月の名古屋公演までの期間に、同ショーの振り付けをしている宮本賢二さんに振り付けを依頼した。

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