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「自分との戦いですね」大学4年生・本田真凜(22歳)が表現する“スケート人生の光と影”「笑顔で終わること、その目標に向けて…」
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph byAsami Enomoto
posted2023/10/01 11:04
フィギュア全日本選手権の予選となる東京選手権大会を12位で通過した本田真凜(22歳)
「振り付けを始めてみたら、同じ先生に振り付けていただいていることもあって、ビビ役もアリエルも、自分のなかで『キャラクターを演じる』という部分で重なったんです。ビビ役では長いセリフを口ずさみながら氷上で演技するのですが、リトルマーメードの振り付けのときも、自然と歌詞を口ずさみながら演技している自分がいて。アイスショーで得たものが大きいな、と思いました」
9月のショーの後は、フリーを重点的に練習してきた。
「みなさんにどういう反応をしてもらえるかなというのが楽しみで、練習で滑っていても、楽しくキラキラしたプログラムになっているな、と思っています」
そのポジティブな気持ちは、本番でも心を支えた。冒頭の「3回転+2回転」ジャンプを決めると、すべてのジャンプを着氷。気品のあるスケーティングと、洗練された仕草で、人魚姫を演じきった。
そんな本田が、「リトルマーメード」で一番見て欲しいところは、スパイラルだという。
「今回長めのスパイラルを久しぶりに入れました。ワンピース・オン・アイスの振り付けで、ノーマル姿勢のスパイラルをどこから見てもキレイに見せられるようにと、何百回も練習してきたので、今回のフリーに生かせていると思います」
美しく天に伸びたフリーレッグと、しなやかに反り返る上半身、そして力強く氷を邁進していくスケーティングレッグ。その3者の均衡が魅力のスパイラルだ。古典的な基本形だからこそ、本田らしい、繊細な美しさが光る。
「笑顔で終わること」を目標に
フリーは11位、総合125.53点の12位で、東日本選手権へとコマを進めると、笑顔がこぼれた。
「ホッとしてはいないですが、ショートに比べると、最初から最後までプログラムの役に入り込んで楽しく滑れたのは良かったです。東日本選手権までには、みなさんが少し安心して見てくれるようなジャンプにできるように。自分が目指すのは、全日本で、このフリーをたくさんのお客さんの前で滑って、笑顔で終わること。その目標に向けて、必死で頑張っていきたいと思います」
自分の心の葛藤を表現するショートと、姫になりきるフリー。2つとも、20年のスケート人生で刻んできた本田真凜である。その姿を目に焼き付けたい。