松坂　昭和50年代後半から60年代にかけて、男子生徒に丸刈りを強制する校則の有効性が裁判で争われました。ただし、その校則自体を違法と判断した裁判例はありません。というのも、当時、丸刈りは男子学生の髪型の一つとして社会的に承認されていて、特異な髪型でもないから教育目的との関係で著しく不合理とまではいえないという結論に落ち着いたんです。1980年代ごろ、丸刈りの学生って、まだたくさんいましたから。ただ、そうして問題提起されると、社会の意識が変わってくるんです。裁判では認められなかったけど、確かに、公立中学において髪型を強制するということは、国家権力が個人に対して自己決定権や表現の自由を制限しているとも言えるんだな、と。その結果、丸刈りを強制する校則がどんどんなくなっていったんです。

今夏、鮮烈な印象を残した慶応ナイン ©Hideki Sugiyama

「丸刈りルールは合理性があると判断される」なぜ？

――今だったら、「特異」に相当するのでしょうか。もう、今の日本で丸刈りにしている人なんて、ほとんどいないですよね。

松坂　公立中学が校則で全生徒に丸刈りを強制するのと、高校野球の監督が部員に丸刈りを強制するのとは状況が少し異なりますが、これまで以上に丸刈りに合理性かあるかどうかが問われるでしょうね。野球部としては「野球に集中するため」とか、「一体感を出すため」とか、「清潔感を保つため」とか、そういう理由を挙げると思うんです。

――「うちの伝統なので」というのもよく聞きますよね。

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