松坂　それは、理由にはならないと思います。それが伝統だとして、その伝統が伝統であり続けている理由を問われているわけですから。私が挙げた3つの理由も、個人的には相当、無理があるとは思うのですが、髪染めやパーマを禁止する校則の有効性が争われた最近の裁判例の傾向からすると、現時点では、野球部の丸刈りルールは合理性があると判断されると思います。というのも、集団の決まりごとは、その組織のトップに裁量が認められていて、エラーしたら殴られるとかよっぽどひどいルールでない限り、裁判所は緩やかにジャッジするものなんです。ましてや、学校の場合は、教育目的との関係で合理性があると認められやすい。最近、大阪の府立高校で髪染めを禁止する校則の有効性が争われた裁判があったのですが、そのときも学校サイドの「生徒の関心を学習等に向けて、非行を防ぐため」という言い分が認められました。教育機関は未成熟な若者を指導するという大前提があるので、一般社会よりは広い裁量権が認められているんですよ。

©Kei Nakamura

――ちなみに松坂さんも高校まで野球をやっていたとのことですが、やはり高校まで丸刈りだったのですか。

松坂　所属していたリトル・シニアリーグのチームから丸刈りを強制された記憶はないのですが、市内の全中学校が校則で「丸刈り」と定めていたので中学まで坊主でした。ただ、高校は浜松北という進学校で、とても先進的な考え方をしていたので野球部も髪型は自由でしたね。当時、静岡県内でも2校ぐらいだったのではないでしょうか、丸刈りじゃないチームは。ただ、みんなスポーツ刈りとか角刈りでしたね。夏の大会前は気合を入れようと、何人かで丸刈りにしたりしていました。それは全然、いいと思うんですよ。

日本は丸刈りの印象がいい？

――私も丸刈りは好きなんですよ。だから髪型が自由なチームで丸刈りにしている選手は、ぜんぜん気にならないんです。むしろ、いいなと思えるくらいで。ただ、今の時代、強制されて丸刈りにしているんだと思うと変に見えて仕方ないんです。裁判所の判断は、国民感情もかなり反映されるじゃないですか。おそらく日本では丸刈りに対する国民の印象がものすごくいいんでしょうね。

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