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「僕の仕事はサッカー選手。空いた時間で勉強」 横浜FCの“エリートルーキー”林幸多郎が司法試験合格を目指す理由 

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二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byJ.LEAGUE

posted2023/09/29 06:02

「僕の仕事はサッカー選手。空いた時間で勉強」 横浜FCの“エリートルーキー”林幸多郎が司法試験合格を目指す理由<Number Web> photograph by J.LEAGUE

Jリーガーとして横浜FCでプレーする傍ら、司法試験も目指す異色のルーキー林幸多郎

サッカー選手が司法試験に挑む理由

 佐賀出身の林はサッカーと勉学を両立してきた。サガン鳥栖U-18でキャプテンを務めて無敗でプリンスリーグ九州を制す一方、進学校として知られる佐賀北高校では成績は常に上位。明治大では4年時にキャプテンとしてチームを束ね、2年ぶりとなる関東大学リーグ1部優勝に導いた。一方で、法学部の授業を受けて「法律は面白い」と感じたことで、サッカーと並行して勉強にも一生懸命励んできた。昨年5月、司法試験予備試験の短答式試験に挑んだものの、ここでは不合格に終わった。ただ勉強自体は「趣味」と言い切る。

「初学者にとって刑法は取り組みやすい。事件とかイメージしやすいし、そういう人は少なくないと思います。単純にもっと(法律を)知りたい、と。そこから始まって、その先に司法試験があるということ。弁護士になりたいから、が先じゃないんです」

 サッカーと司法試験。外からは二兎を追っているように映るが、本人にその感覚はない。

「僕の仕事はサッカー選手。何よりも競技優先だし、サッカーが一番であることは当然です。ただ24時間サッカーばかり考えることはできないので、空いた時間を勉強に充てている。それだけのことです。

 選手がサッカー以外に興味を持つって、別に変わったことでも何でもない。ゲームが面白いという人と同じで、僕は勉強が面白い。たまたまサッカーと勉強だけに興味があった。何かほかに夢中になれるものがあれば(勉強のほうを)あきらめることになっていたかもしれませんけど」

林が考える“両立のメリット”とは?

 ちなみに予備試験の再チャレンジは来年を考えているとのこと。両立にはむしろメリットを感じている。サッカーで悩んだとき、勉強をすれば忘れられるという。違う視座に立つことで逆に頭を切り替えられ、やるべきことが見えてくる場合もある。“横浜ダービー”がまさに好例だ。

 今季J2から昇格した横浜FCは、残留争いの渦中にある。下位から抜け出せない状況は続いているものの、ここにきてチームの状態が上がってきていることは間違いない。

 終盤戦に入り、勝ち点を積み上げていかなければならない熾烈な戦いが待ち受ける。ルーキーらしいハツラツとした働きで、チームを活気づけていくことが林の役割になる。

「走る、闘う、頑張る。そういったベースのところを真面目にやっていくことで、チームを元気づけていくことができればいい。僕にはそういったことしかできないと思うので」

 真面目にコツコツと積み上げていく。それが林幸多郎の生き方だ。

林幸多郎Kotaro Hayashi

2000年11月16日、佐賀県生まれ。サガン鳥栖U-15、18を経て明治大に進み、主将も務めた。'23年から横浜FCでプレー。3月4日鹿島アントラーズ戦でJリーグデビュー。170cm、70kg

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