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マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
「タイガースはあいつに懸けてくれたんです」2016年《悲鳴のドラフト1位》大山悠輔“虎の主砲”の大学恩師が語った「ドラ1指名“ホントの理由”」
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byHideki Sugiyama
posted2023/09/25 17:01
2016年のドラフト時には1位指名にファンから驚きの声も挙がった阪神・大山悠輔。いまではチームの不動の4番に座る
それだけに、
「第1回選択希望選手、阪神、大山悠輔、21歳、内野手、白鴎大学」
このアナウンスを聞いた瞬間の阪神ファンの落胆は、私にも想像できた。
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なんだ、ピッチャーじゃないのか。白鴎大学? 大山? 誰だ、いったい?
いろんな思いが渦巻いたことだろう。
そのあとの1位指名で、今度は5球団が田中正義投手を指名した。そんなサプライズが発生しているのに、会場が沸くどころかなんだかちょっと退いたような雰囲気になったことを覚えている。
大学時代の恩師が語った「大山の非凡さ」とは…?
そのドラフトの半月ほど前だったと思う。
大山選手と、やはりドラフト候補だった中塚駿太投手(西武2位→退団)の取材に、栃木県小山市の白鴎大グラウンドにおじゃましていた。
「大山みたいな右打ちのロングヒッターなんて、誰もいませんよねぇ。今年のドラフトで」
当時の黒宮寿幸監督は、チームの選手についてはっきりと白黒つけて話す人だった。
よいものはよい、そうでもないものはそれなりに。ありのままの評価をする方だったので、こちらも素直に聞けた。
「ウチのあんな高いネット越えられるバッターなんて、大山以外見たことないですから」
リーグ戦も行われる白鴎大学グラウンドには、外野に50mもあるようなネットが高々とそびえる。そのネットを、打撃練習で大山選手の雄大な放物線が越えていくのを私は何度も目撃していた。
「リーグ戦でも越しますから。それに、ライトにもホームランが打てる。それも、ライナー性で。最近はセカンドの練習も始めていて、いや、これが器用にこなすんですよ」
白鴎大時代の大山選手は、1年春から不動の三塁手。ずっとホットコーナーを守り通していた。
「あいつ、練習休んだこともほとんどないんです。僕もあいつは最初からプロに上げようと思って鍛えましたから、身体的にも、精神的にも、相当追い込んできましたけど、一度も音を上げたことないです。大山にないものがあるとしたら、全国の舞台で活躍した実績だけ。それについては、監督である自分の責任なんですけどね。申しわけないことしました」