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ラグビーPRESSBACK NUMBER
ラグビーW杯前の“地獄の合宿中”に突然のLINE「人生で一番辛かった時っていつ?」夫の珍しい弱音に妻は…〈いつも明るい“カッキー”の素顔〉
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph byKYODO
posted2023/09/25 11:08
スクラムはもちろん、迫力あるボールキャリーや守備での貢献も光るプロップ垣永真之介(31歳)。W杯デビューに向けて虎視眈々と準備に努める
垣永は2021年にジェイミー・ジョセフHCのもとで初めて代表入りを果たし、11月の欧州遠征スコットランド戦で途中出場。翌年7月のフランス代表戦にも名を連ねた。しかし一転して、10月のニュージーランド戦や11月の欧州遠征ではメンバー漏れ。W杯を1年後に控え、選手を絞り込んでいく過程で名前が呼ばれないことは、絶望的な宣告にも思えた。
「もうやめようかな……引退するわ」
この頃、垣永は度々そんな言葉を口した。その度に香奈さんは「もういいよ、いつでもやめなよ」と即答していたという。
「『やめちゃダメだよ』なんて私から言うのは違うと思って。でも実はどこかで、この人はやめないだろうなと思っていたんです。この10年間、絶望に突き落とされてはまた這い上がるというのを何度もやってきた人だから。しばらく経つとやっぱり主人は『いや、頑張る』って。どんなに絶望的な状況でも、やっぱりまだ諦めたくない、という気持ちがあるんだろうなと感じていました」
いつも明るいカッキーの意外な素顔
グラウンドの中ではパッション溢れるムードメーカーだが、その素顔は「物静かだし、真面目で繊細な人」だと香奈さんは明かす。
「サービス精神が旺盛で、目の前の人を幸せにしたい、周りの人を喜ばせたいという気持ちがあるんです。だから気を遣いすぎてしまうところもある。実はメンタルがラグビーにも影響するようなタイプだったと思います」
そんな垣永の繊細な一面を支えているのが、コロナ禍を機に目覚めた新しい趣味だ。ある日突然、憧れていた大型二輪の免許を取得し、今では大型バイク2台を所有。練習の行き帰りもバイクで駆け、オフはツーリングに出かけて気分転換を図る。普段はサントリーの会社員として練習と並行して酒類の営業などの仕事をこなしているが、それとは別に個人的にアパレルブランドも立ち上げるなど、オンとオフを切り替えることで心身を充実させている。
「最初はバイクも大反対でした。ただでさえ命の危険があるスポーツをやっているのに、って。でも、ツーリングから帰ってきた後とかすごく元気なんですよ。リフレッシュして、メンタルの安定には一役買っているのかも。今はもう何も言わないです(笑)」