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「やったれ、金髪の山ちゃん」ラグビー日本代表追加招集「山中亮平のキック」はサモア対策になるか…“無念の負傷”マシレワの輝きとは?
text by
大西将太郎Shotaro Oonishi
photograph bySankei Shimbun
posted2023/09/20 11:07
早速フランス入りしてチームに合流した山中亮平(35歳)。W杯メンバー落選後に髪の毛を金色に染め上げていた
今回のバーバーズはオーストラリアと日本の選手を中心にした混成チーム。山中以外にもバックアップメンバーとなり得る複数の選手たちが、W杯開幕前から英国のクラブと試合を重ねてきた。おそらく両国の協会、バーバーズの3つの考え方が合致した上での施策だと思うが、こういった緊急事態に日本からではなくロンドンから現地フランスに合流できることはプラスしかない。どんな話し合いが行われたのかは把握していないが、今回のような策を今後もスタンダートにしてほしい。
準備している人にしか神様は微笑まない
恵まれた環境があったとはいえ、山中のメンタリティーには敬意を示したい。W杯落選となれば気持ちは切れるだろうし、新シーズンに向けて休暇を優先させたいのが本心だ。しかし山中は、35歳にして次のW杯を目指すとSNSで早々に宣言したのだ。その言葉が何より自らを奮い立たせたのだろう。体にムチを打ち、バーバーズの試合で好調を維持したことが追加招集につながった。準備している人にしか神様は微笑まない。この出来事も未来の日本ラグビーにとって教訓になったと思う。これぞW杯なのだ。
思い返せば、私が出場した2007年W杯フランス大会は「神社にお祓いに行くべきだ」という意見が出るほど、ケガ人が多かった。大会直前にSO安藤栄次、WTB大畑(大介)さんらが離脱。W杯が開幕してからも毎試合ごとに負傷者が発生し、大会中は2名も離脱した。特にSOは、候補筆頭だったジェームス・アレジ(2011年大会代表)が春先に骨折したため、JK(ジョン・カーワンHC)は頭を悩ませたと思う。今で言う松田力也も李承信もいなくなったようなものだ。元々メンバー入りしていたとはいえ、まだ20歳だった小野晃征やCTBが本職のブライス・ロビンスが務めた。
そんな緊迫した状況でも、チームの空気を何より大切にした。代わりにやってくる選手が意気込むことは当然だが、受け入れる方もしっかりと態勢を作らないといけない。私自身も初めてのW杯だったが、若手選手や途中合流する選手たちが本来のパフォーマンスを発揮できるよう、積極的に話しかけた覚えがある。そういう働きかけは本当に大事だと思う。