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「タイガースに入団してよかった…」28歳で早逝、横田慎太郎が語っていた“阪神への感謝”、それでもアカデミーコーチ就任を固辞した理由
text by
横田慎太郎Shintaro Yokota
photograph byJIJI PRESS
posted2023/09/16 11:03
2019年、引退のスピーチを行う横田慎太郎さん。引退をしてからも阪神球団との交流は続いていた
「病気になって、よかったこともある」
大好きな野球を奪われたのは事実です。こんなに残念で悔しいことはありません。
でも、それまで知らなかった世界を知ることができたし、自分のために本当にさまざまな人が協力してくれた。自分が知らないところで、献身的に動いてくれた人がたくさんいました。
そういうことがわかってくるにつれて、「ああ、病気は必ずしも悪くなかったな」と考えるようになったのです。少なくとも、病気になったことを悔やんではいません。
経験を伝えることは僕の義務
最終的にプロ野球はあきらめなければなりませんでした。けれども僕は、病気になったからといってあきらめて逃げたのではなく、目標をもち、それを実現するべくがんばってきた。その体験を通して強くなったと思うし、得るものも多かった。人間として成長したと思います。そして、僕が最後まであきらめずに病気と闘うことができたのは、何度も言いますが、さまざまな人が支えてくれたからにほかなりません。
それならば、今度は僕自身が同じように病気と闘っている人たちや周囲の人たちにこの経験を伝え、元気を与えたい。置かれた状況を嘆いたり、悲しんだりするだけではなく、前向きに闘っていくための力になりたい。それは僕の義務だと思いました。
僕がやらなければいけないのはこれなんだ!
先日も、悪性の腫瘍で苦しんでいるという方の家族から、「なんとか力づけてやってくれないか」という連絡をもらったので、さっそくメッセージを送りました。すると、とても喜んでいただいた。
「僕がやらなければいけないのはこれなんだ!」
あらためて思いました。
具体的には、講演などに呼ばれたり、インタビューを受けたり、YouTubeなどに出演したりして、自分の体験を話すことが主な活動になっています。病院への訪問も積極的に行っていたのですが、新型コロナウイルスの影響で中断してしまいました。
もちろん、収束したらすぐにでも再開するつもりです。
チームが元気ないから、おまえのメッセージがほしい
引退して契約が切れたうえ、アカデミーのオファーをお断りしたにもかかわらず、タイガースとはいまも交流が続いています。