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引退から5年のペドロサ37歳が現役を蹴散らし4位入賞、マルケス絶賛の衰えぬテクニックと極上のマシン開発能力《KTM躍進の立役者》

posted2023/09/15 11:01

 
引退から5年のペドロサ37歳が現役を蹴散らし4位入賞、マルケス絶賛の衰えぬテクニックと極上のマシン開発能力《KTM躍進の立役者》<Number Web> photograph by Satoshi Endo

現役を引退して5年になるにもかかわらず、ワイルドカード参戦のサンマリノGPで4位入賞したペドロサ

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遠藤智

遠藤智Satoshi Endo

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Satoshi Endo

 2018年に現役引退し、現在KTMのテストライダーを務めるダニ・ペドロサが第12戦サンマリノGPにワイルドカード参戦。再び素晴らしいレースを披露してファンを喜ばせた。

 ペドロサは土曜日に行われたスプリントレースで予選5番手から4位でフィニッシュ。日曜日の決勝レースでも4位となった。表彰台独占を果たしたドゥカティ勢に唯一肉薄し、多くのレギュラーライダーを圧倒する走りを見せた。

 冒頭で、「再び素晴らしいレース」と書いたのは、ペドロサが第4戦スペインGPにもワイルドカードで出場し、予選6位からスプリント6位、大接戦となった決勝レースでも7位になって、関係者の度肝を抜いたからだ。今回はスペイン以上の走りを見せて、ライダーとしてのポテンシャルの高さをアピールするだけでなく、この数年のKTMの躍進の大きな原動力となっていることをあらためて感じさせた。

 ペドロサは1985年生まれで現在37歳。2001年に125ccクラスで世界デビューして03年にタイトルを獲得。04年に250ccクラスにスイッチして04年、05年と2年連続制覇。3年連続でタイトルを獲得して、06年にMotoGPクラスにステップアップ。18年シーズンまでレプソル・ホンダで戦った。

最速レプソル・ホンダを支えたライダー

 ペドロサはホンダの生え抜きで、レプソル・ホンダには最長記録となる13年間在籍した。その間のチームメートには、最強最速と呼ばれたケーシー・ストーナーや絶対王者のマルク・マルケスらがいた。そしてヤマハにはバレンティーノ・ロッシ、ホルヘ・ロレンソという強豪がいた時代で、引退するまで総合2位が3回とチャンピオンにはなれなかったが、最高峰クラスで31勝(3クラス通算54勝)、表彰台獲得112回(同153回)という大記録を打ち立てた。

 日本のアライヘルメットと契約するペドロサは、MotoGPクラスで戦うようになってから、ヘルメットに「侍」の文字と兜の絵柄を描くようになった。いま兜と言えば大谷翔平のホームランでお馴染みだが、レース界では「兜」と言えばペドロサ。偉大な記録を打ち立てたペドロサの栄誉を称え、ヘレスサーキットの6コーナーには兜のモニュメントが設置されている。日本でもペドロサのファンは多く、158cmと小柄なことから「リトル・サムライ」のニックネームを持つ選手である。

 握手をすると小さく柔らかい手が強烈に印象に残る。そして、こんな華奢な身体であのモンスターマシンをどう操っているのかと不思議になる。だからこそ、ペドロサがリクエストするバイクは「乗りやすさ重視」で、彼が手掛けたバイクはパフォーマンスの高さで有名である。

【次ページ】 マルケスも称賛したスーパーラップ

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