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大谷翔平“手術をしない”選択肢も? 田中将大を靱帯損傷から復活させた「PRP療法」…コーチの決断「これからのマサは全力で投げる必要はない」 

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笹田幸嗣

笹田幸嗣Koji Sasada

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posted2023/09/04 17:01

大谷翔平“手術をしない”選択肢も? 田中将大を靱帯損傷から復活させた「PRP療法」…コーチの決断「これからのマサは全力で投げる必要はない」<Number Web> photograph by Getty Images

現在は打者としての出場を続ける大谷。かつて田中将大は靭帯損傷の際、手術ではなく「PRP療法」を選択した

トミー・ジョン手術ではなくPRP療法を選択した“狙い”

 田中が言った「変える」とはテークバックを中心にした投球フォームの技術にあった。テークバックの際、上体で右腕を隠しながらコンパクトにトップを作る。その後は下半身を軸に上体を回すイメージ。自然と腕は前に振られ肘への負担は軽減する。加えてロスチャの言った出力ダウンは肘への負担が確実に軽減する。高い出力を再び取り戻そうとするのでなく、新たなる技術を構築しケガの前と同様のパフォーマンスを目指す。トミー・ジョン手術でなく、PRP療法を選択した狙いはここにあると確信した。

 15年以降も勝負所では97マイル(約156キロ)の直球を投げ込んだ田中だが、投球スタイルは制球重視へと変貌を遂げた。コロナ禍で60試合制となった20年の短縮シーズンを除けば、二桁勝利、奪三振率、投球回数、防御率も高いレベルで維持した。『PRP療法』で道を切り開いた成功者と言っても過言ではない。

大谷翔平はどちらの選択肢を選ぶのか?

 そして、今思う。2度目の右肘靱帯損傷が発覚した大谷翔平は今後どんな決断を下すのだろうか。9年前の田中将大とは損傷の部位や程度、年齢や肉体のコンディション、医学の進歩も含め同一には括れない要素が数多くある。個人的には天井知らずの高みを目指す大谷の価値観からすれば、トミー・ジョン手術を受ける可能性は高いと思うが、その一方で大谷の制球力、豊富な球種を考えれば『PRP療法』を選択し、多少の出力ダウンをはかったとしても十分にエースの投球は出来るのではないか。

 田中将大が日米通算200勝の金字塔に近づきつつある喜びを感じながら、こんなことが頭を駆け巡った次第である。

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