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「目を真っ赤にして激怒した日も」渡邊雄太が“情熱的なリーダー”に進化するまで…アメリカで痛感した無力な自分、理想のキャプテンはスラダン仙道
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byYUTAKA/AFLO SPORT
posted2023/09/04 11:03
感情をむき出しにしたリーダーシップでチームを牽引した渡邊雄太。観る者を魅了するプレーと言葉が目立った
リーダーとしての渡邊を考えた時、学生時代に忘れられないシーズンがある。
ジョージ・ワシントン大の最上級生として迎えた2017〜18シーズン、渡邊はキャプテンの1人に任命されたが、確固たるリーダーシップの確立に苦心した。個人の実力は攻守両面ですでにハイレベル。英語での日常会話も問題ではなくなっていたが、持ち前の熱い姿勢と闘志を同僚たちに伝え、統率していくのは簡単なことではなかった。
その年、ジョージ・ワシントン大は15勝18敗という厳しい成績で低迷。渡邊が孤軍奮闘するも、タレント&闘志不足で敗れるゲームが目立った。地元ゲームで30点近い大差をつけられての惨敗を喫し、プライドを感じさせないチームメイトに激怒した渡邊が「試合が終わってこんな(悔しい)気持ちになっているのは初めてです」と目を涙で真っ赤に染めて吐き捨てたこともあった。
「チームが上手くいっていないとき、1つにまとめるのは本当に難しいですね。チーム状況が悪くなると、どうしても個人がやりたいことをやりだしてしまう。そういうときに声をかけても、反応がなかったりします。だからといって、“あいつら聞いていないからもういいや”と自分も勝手なことをやりだすと、状況はさらに悪くなっていってしまう。苦しい時こそ自分がしっかりと声を出してまとめていかなければいけません。そこが本当に難しいところです。その部分はまだ成長していかなければいけないです」
その年はどんなゲームでの勝利、個人としての活躍よりも、効果的なリーダーシップを求めて悪戦苦闘していた渡邊の姿と言葉が何よりも印象に残っている。
最高峰NBAで学んだ“世界基準”
ただ、そうやってもがき、苦しんだ日々の中でも、渡邊は自分なりの答えを少しずつ見つけ、リーダーとしても成長していったのだろう。
その後にNBA入りを果たすと、最高峰のリーグでもカイル・ラウリー、フレッド・バンブリート、マイク・コンリー、ケビン・デュラントといった多くの優れたスター選手たちと一緒にプレーすることで貴重な経験を積んだ。これらの積み重ねによって、今では日本代表の重鎮格となった渡邊は自分なりの統率方法を学んでいったのに違いない。