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「下着をハサミで切って、真っ裸にさせられ…」女子レスラー初の“オールヌード写真集”も、井上貴子のプロ意識「私にとっては“作品”です」
text by
伊藤雅奈子Kanako Ito
photograph byL)AFLO、R)Takuya Sugiyama
posted2023/09/02 11:01
今年デビュー35周年を迎える女子プロレスラーの井上貴子
打ち合わせにも参加…写真集で見せた“プロ意識”
――一方で、プロレスの勝率も上げたい気持ちもありましたか。
貴子 プロレスもちゃんとやらないといけないとわかっていたので、試合でボコボコにされるという覚悟を持って、毎日リングに上がってましたよ。実際に攻撃はきつかったし、撮影を控えていることを知った選手のなかには、あえて顔を狙う人もいたかもしれないね。でも、トップクラスの選手は、そんなことしなかった。
――そのころ、田口マネージャーや貴子選手と話していて印象深かったのは、貴子選手が写真集の打ち合わせの段階から参加していたということでした。
貴子 あー、そう、そうっ! よく覚えてるね(笑)。最初にやったアイドルレスラーとしての「Sel:FISH」(92年3月)は、ポニーキャニオンとフジテレビに任せたもので、2冊目(93年10月刊行の「BLESS」)は試合中心。でも、3冊目となると、(宣伝として)一般誌にも出るし、女優さんやモデルさんには出せない、プロレスラーならではのことをやれるよねという話になってたのね。それで、「打ち合わせから参加したい」って言ったんだよね。ただ、写真週刊誌の「FRIDAY」だけの撮りおろしもあったんで、正確にはどこから参加したかわかんないけど、制作の前段階から入ってました。
――それはなぜ?
貴子 カメラマンとの意思の疎通がないと、進めないんです。あと、1冊のなかにストーリーがあって、「こういうコンセプトでいきます」と決まれば、気持ちを持っていける。ただ撮られているだけであれば、それが写真にも出てしまう。ストーリー性のある表情、ポーズ、撮られ方を研究して、そのためにも打ち合わせから入って、カメラマンとよく話して、意見を出しあって。できあがってからも、「この写真を表紙にしてください」って言ってました。1回も通ったことはないけど(笑)。
「(撮影は)毎回毎回、限界までやってましたよ」
――ハハハ(笑)。冊数を重ねていくと、前作よりハイクオリティーな内容が求められていくと思うんですね。「私、どこまで過激になっていくんだろう?」という不安はなかったですか。
貴子 常にね、今回が最後という気持ちでやってました。まさか10冊もやれると思ってなくて。だから、毎回そのときの最高を出していて、「次はこんなことをやろうか」なんて余裕はなかった。売れるためには……っていう考えだったから、毎回毎回、限界までやってましたよ。
――2000年12月に刊行された「MAKE LOVE」では外国人女性を相手に、続編で02年1月刊行の「MAKE LOVE 2」では日本人女性を相手に、全裸で絡みました。いわゆるセックスの体位までしてみせて……。
貴子 あれはね、「外国の女の人と絡んだら格好いいんじゃない?」って誰かが言ったんだよね。「外国の男の人を相手に」という案も出たんだけど、相手が男性だと写真集を見る人が嫌がるから、女性のほうが想像ができていいということになって。「あっ、そういうもんなんだ」って、こうしたところも勉強になりました。