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<独占告白>渡邊雄太に聞いた”代表引退宣言”の覚悟「本気ですか?」「本気です」ホーバスHCのメッセージに返信しなかった理由とは
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph byKiichi Matsumoto
posted2023/08/28 17:00
バスケットW杯開幕前にNumberのインタビューに応じた渡邊雄太。代表引退宣言の真意や八村塁への思いなどを語ってくれた
「内々で話しているだけだったらうやむやになって、結局、『じゃ、次もお願いします』みたいになることだってあると思う。公にすることによって、全員の逃げ道をなくしたみたいな感じは、正直あります」
退路を断って、目の前のチャレンジに飛び込む。まさに、渡邊流『崖っぷち』精神の真骨頂だ。
6月にロサンゼルスでトレーニングしていたときに、八村塁と食事に行き、代表の話もしたという。このとき八村は今夏の代表活動を辞退することを考えていて、渡邊にもその予感があった。八村が出ないことは日本代表にとっては戦力的に痛手だが、だからといって、出てくれと説得するつもりはなかったという。
「出ないって言っても、それを説得してまで彼の気持ちを変えようみたいなことは思ってなかった。彼には彼の人生がある中で、人それぞれ、考え方も違う。そのときに『俺は今回が最後になるかもしれんから』と言ったら、塁は笑っていました」
ルイの気持ちもめちゃくちゃわかる
その後、6月下旬に八村が代表辞退を発表すると、渡邊はすぐSNSにこう投稿した。
〈先に言っとくけど俺は出る。でも出ない判断をしたルイの気持ちもめちゃくちゃわかる〉
同じようにNBAで戦う仲間として、NBAと代表を両立させることがどれだけ大変なのかは、誰よりもわかっている。
「シーズンの合間に予選を戦ったBリーグ選手たちが一番しんどい思いをしているかもしれない」と、日本代表のチームメイトたちに気配りをしたうえで、NBAのプレッシャーについて語った。
「いっしょにNBAでやっていて、毎年すごい選手がどんどん入って来る中で生き残るサバイバルの大変さっていうのは、多分僕が一番わかっていると思う。だから、塁が出ないっていうことに対して、変な批判が起きて欲しくないなっていう気持ちで、あの投稿をしました」
渡邊のように日本代表に熱い思いを持っていても、NBAのシーズン中は代表のことを考える余裕がなかったという。代表ヘッドコーチ(HC)のトム・ホーバスからはシーズン中も渡邊のもとに何度かメッセージが届いたが、一度も返事をしなかった。
「トムには申し訳ないですけど、正直、そんな余裕は一切なかった。それは多分、塁も同じ。そのことについて塁と話したこともあるんですけど、シーズン中は自分たちがやっている目の前の、NBAのことでとにかくいっぱい、いっぱいなんで、シーズンの真っただ中にこの夏どうという(代表活動の)話をされても正直、全然ピンともこないですし、それどころではないので」
「NBAではずっと、今年が最後かもって思いで…」
そんなギリギリの戦いをしているから、引退は常に意識している。