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オリンピックPRESSBACK NUMBER
酷暑ドーハの世界陸上で「冷えを感じていた」…東京五輪を出場辞退、50km競歩・鈴木雄介の身に起きていたこと「最初は“疲れ”と思っていたが…」
text by
小堀隆司Takashi Kohori
photograph byYuki Suenaga
posted2023/08/25 11:06
2019年世界陸上の50km競歩を優勝の後、2021年東京五輪と2022年世界陸上の出場を辞退した鈴木雄介。何が起きていたのか、本人の言葉で振り返る
五輪があるので休む気になれなかった
たらればになるが、この時点で医師の判断を仰ぎ、適切な治療、もしくは十分な休養を取っていれば後の運命は変わっていたのかもしれない。この後に続く壮絶なストーリーを聞いていると、なおさらそう思ってしまう。
帰国直後から眠気が消えず、遠征の荷ほどきもできないくらいだった。ひと月が経ち、2カ月が過ぎても、だるさや疲労感は残ったまま。練習で軽く走っても、すぐに心拍数が160まで跳ね上がった。今までにない症状が続いたが、それでも鈴木は事態をことさら重く受け止めようとは考えなかった。
「それだけ心拍数が上がっても、その時はまだただの疲れだと思っていて。以前のようにスッキリと練習はできないけど、オリンピックが翌年にあると思うと休む気にはなれなかったです。それに試合に出ると“そこそこの記録”で歩けてしまうので、それも判断を鈍らせた要因なのかもしれません」
定期的な血液検査では異常がなかった。ヘンだなと思いながらも練習はできたので、不調の理由をそれ以上追求することもなかった。やがてオリンピックイヤーを迎えたが、年が明けると世界中で新型コロナウイルスが大流行する。不確かな未来に誰もが不安を覚える中、2020年3月30日には東京五輪の1年延長が正式にアナウンスされた。
＜続く＞
