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スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
「現役引退はないですから…」あの“元祖カーリング娘”小笠原歩さんの今「初めてのパワポ作りは地獄でした(笑)」超多忙なコーチ生活
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byJMPA
posted2023/08/21 17:30
2009年に出産、子育てを経て競技に復帰。2014年のソチ五輪に出場した小笠原歩さん
「2023年の大会の決勝はスコットランドとの一戦で、最後の一投を真ん中に入れれば勝ちでした。でも、短かった。それでも、私はスキップが投げる前から入ろうが入るまいが、決勝まで連れてきてもらったこと自体がすごいことだし、一投ですべてを評価するのではなく、私はそれまでの過程を見てきて、選手たちを褒めてあげたいと思っていたんです。ジュニアには未来があります。競技を続けてもらう種を蒔くのが、ジュニアのコーチには大切だと思っています」
世界ジュニアの結果が、数年後のシニアの結果に直結していることは世界選手権やオリンピックを見れば明らかで、日本の将来が楽しみでもある。
「海外遠征から帰ると子どもは大きくなっている」
小笠原さんはジュニアチームだけではなく、4月に韓国で行われたミックスダブルスの世界選手権で銀メダルを獲得した松村・谷田組の日本代表に帯同した。ジュニア、ミックスを担当するとなると、多忙を極める。去年の海外遠征の様子を聞いてみると……。
「去年から今年にかけては、4月にスイス、5月にスウェーデン。オフがなく、選考合宿や強化合宿を国内でこなして、 9月にスイスとチェコ、11月にまたスイス、12月フィンランド。年が明けてから1月はアメリカに、2月はドイツで、4月に韓国ですかね。遠征から戻ると子どもは大きくなっていて、今では身長は175センチを超えそうで、私が帰るたびに服や靴を買いに行っています (笑)」
当初は「自分には向いてない」と思っていたコーチング業も5年目に入った。
「いま感じていることは、自分の語彙力が不足していること、そして自分が無知なことに、もっと勉強しておけよ、と昔の自分に言ってやりたいです(笑)。競技しかやってこなかったツケがいまになって、来てる感じです。まだまだ勉強ですね」
来年1月には、韓国でユース・オリンピックが開かれ、いまはその準備段階。しかし、小笠原さんのコーチとしてのスタンスは、しなやかである。
「コーチだからといって、私が正解をすべて持っているわけではない。だから、最終的に氷上に立つ選手たちで最善策を選択しなさいということを伝えています。カーリングって選手同士で考えを出し合って、こうだって決めたらそれが正解なんです。コーチとしては、チームが勝とうが負けようが、メダルを取ろうが関係なく、ジュニアの場合は、自分たちで考えて行動する主体性を身に付けてくれたら成功、くらいに思っています。すべての行動、言動になぜこの要素が必要なのか。何のためにこの動きやトレーニングをするのか。当事者が納得して取り組むことがいちばん大切だと思っています」
<前編から続く>