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「おい、フルトンがおかしいぞ…」井上尚弥の“仮想フルトン”になったアメリカ人の告白「ナオヤと1カ月前に話した“腹、腹、腹…”プラン」 

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林壮一

林壮一Soichi Hayashi Sr.

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posted2023/08/19 17:04

「おい、フルトンがおかしいぞ…」井上尚弥の“仮想フルトン”になったアメリカ人の告白「ナオヤと1カ月前に話した“腹、腹、腹…”プラン」<Number Web> photograph by AFLO

井上尚弥vsフルトン。ジャンプしながら“追撃の左フック”を完璧にヒットさせたシーン

「この時は17ラウンド、そして、ナオヤのケガの回復を待って、6月からのセッションで、26から30ラウンドやったと思います。特に彼の変化は感じませんでした。とにかく、試合に向けて集中しているな、という印象でした。

 ただ、やはりジャブの正確さは感じましたね。左右、全てのパンチが強いのですが、いいジャブが当たるから、次に繋がる。ビッグパンチを打ち込める、という基本を教わりました。僕だけじゃなく、スパーリングパートナー全員にまず鋭いジャブを当て、次の展開に持って行くことをやっていました」

 フルトン戦を控えた井上尚弥が6月に練習を再開後、ジャフェスリーはモンスターからアドバイスを求められた。

「再スタートして最初のスパーが終わった時です。『今日、戦ってみて気付いたことがあったら、言ってくれ』と。だから、顔面へのジャブよりも、ボディーの方が当たります、って答えたんです。彼は背が低いから下の方が届きやすい。的も動かないでしょう」

 まさに、7月25日のWBC・WBOスーパーバンタム級タイトルマッチを暗示する会話である。

「腹、腹、腹、と打って行けば、どうしたってフルトンはガードを下げますから、そこにあの強い右を打てば良いと思いました。その通りの展開になりましたね」

「フルトンがおかしいぞ…」

 それでも、このスパーリングパートナーは、WBC/WBOスーパーバンタム級タイトルマッチは、判定まで縺れると予想していた。

「フルトンもいいボクサーですから、簡単な試合にはならないだろうと見ていました。2人共チャンピオンですし、ナオヤがスーパーバンタム級での初めての試合ということが懸念材料でした。でも、フルトンはいつもの彼じゃなかったですね。1ラウンドが終わって、おかしいな、ヘッドスリップも使わないし、どうしたんだろう?って感じながらTVを見ていました。

 ナオヤの強烈なプレッシャーに、フルトンは何をしていいのか分からなくなっていきましたね。でも、僕は最後の最後までフルトンが粘るんじゃないかと思っていたんです。やはり、チャンピオンですし、経験のある選手ですから。だからノックアウトシーンには驚きました。ボクシングに対する姿勢と準備が、ナオヤを勝者としたのでしょう。やっぱりモンスターですよね」

 ジャフェスリーは結んだ。

「2年かけてモンスターとの差を埋め、挑戦したいです。精一杯、彼を追い掛けていきますよ」

 井上尚弥は世界中のファイターから追われる存在だ。果たして、追いつける男はいるのだろうか。

<前編から続く>

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「イノウエの練習相手が次々に壊れて…」なぜ米国の元アマ王者が井上尚弥の“仮想フルトン”に指名された?「オオハシに警告されたよ…ヤバいぞって」

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