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井上尚弥、フルトン戦を自ら語る!「あれ、こんなもん」と思ったけど、“一つだけ想定外”だったこと「10回くらい踏まれましたから」
posted2023/09/02 11:04
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Takuya Sugiyama
現在発売中のNumber1079号掲載の[フルトン戦を語る]井上尚弥「パンチが当たらないことを前提に」より内容を一部抜粋してお届けします。【記事全文はNumberPREMIERにてお読みいただけます】
井上尚弥が燃えに燃えた。試合後は興奮のあまり翌日の夜まで一睡もできず、帰宅すると「気絶しました。目が覚めたらめっちゃ筋肉痛で起きられなかった」と振り返るほど。これほど心身ともに緊張し、力を出し切った試合があっただろうか。4階級制覇達成から2週間後、新チャンピオンが珠玉のファイトを詳細に振り返った。
「自分の中でも始まってみないと、どういう展開になるか分からない初めての経験というか。スーパーバンタムに上げたのがやっぱり大きかったと思います。フルトンの体格とリーチの長さを踏まえて、どういう展開になるのか。試合前はフルトンの出方をいくつか想定して、こういう出方をしてきたら長引きそうだなとか、ファースト・コンタクトがどうなるのかなとか。本当に分からなかったですね」
7月25日、有明アリーナで行われたWBC・WBOスーパーバンタム級王者、スティーブン・フルトンとの一戦は井上にとって階級アップ初戦だった。これまでにも2度階級を上げているとはいえ、スーパーバンタム級は別物だと感じていた。そこで選んだ入場曲は『DEPARTURE』。新たな出発という決意のメッセージを超満員の1万5000人に届けたのである。
「オマール・ナルバエス戦('14年12月)でケガをして、1年ぶりの復帰戦でこの曲を初めて使いました。再出発という意味と曲調がすごく合ったんです。そのあと布袋寅泰さんと知り合ってドネア1、2、ポール・バトラー戦で『キル・ビル』の曲を使わせてもらって、これは特別な試合で使わせてもらおうと考えてました。今回も特別ではありましたけど、スーパーバンタム級初戦ということで『DEPARTURE』を選びました」
およそ5年ぶりの挑戦者という立場は、集中力を一段と研ぎ澄ました。自ずと戦前のシミュレーションにも力が入った。
「フィジカル勝負の可能性はあると思っていた」
大きな焦点はやはり技巧派、フルトンの出方だ。試合前、パワーではモンスターが上回るという指摘が大勢を占めながら、井上はフルトンがフィジカルをいかしてグイグイと前に出るスタイルも予測していた。