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ボクシングPRESSBACK NUMBER
「イノウエの練習相手が次々に壊れて…」なぜ米国の元アマ王者が井上尚弥の“仮想フルトン”に指名された?「オオハシに警告されたよ…ヤバいぞって」
posted2023/08/19 17:03
text by
林壮一Soichi Hayashi Sr.
photograph by
Soichi Hayashi Sr.
筆者は今回アメリカに渡り、ラミドにインタビューを行った。井上尚弥と何度もスパーした若者が感じたこととは?【全2回の1回目/#2へ】
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井上尚弥の米国人スパーリングパートナー
ロサンゼルス国際空港から東におよそ55kmの地、アナハイム。当地で最も知られているのは、ご存知のようにディズニーランドだ。年間1860万以上もの人が世界中からやって来る。そのテーマパークから、北に3分の場所に倉庫街がある。けっして人目に付かず、どこに入口があるか分からない倉庫の角がボクシングジムとなっている。
11戦全勝4KOのフィリピン系アメリカン、ジャフェスリー・ラミド(23歳)の父親、インゲマール(63歳)が作り、愛息を指導しているジムだ。息子は、これまでに何度か井上尚弥のスパーリングパートナーを務めている。今年の4月15日には韓国・仁川で、元IBFスーパーバンタム級王者の岩佐亮佑を8回判定で下した。
祖国、フィリピンでサトウキビやマンゴーを栽培してカネを貯めたラミド家は、インゲマールが10歳の時に家族でハワイに移住する。家の主はホテルの電気技師として働き、妻、3人の姉、そしてインゲマールを養った。
「幼い頃、ブルース・リーに憧れてね。カンフーを習ったんだ。彼が亡くなったのは、私が13歳の時。本当に落ち込んだよ。その後、友達に誘われてボクシングジムに通い始めた。アマチュアで2戦した後、コーチの道を選んだ。自分を律することが大事だというブルース・リーの哲学や、ジークンドーの要素を取り入れながらね」
高校卒業後、カリフォルニアに渡り、専門学校で航空機や宇宙工学の知識を身に付けた。その後20年、航空機の設計や整備に従事した。
「息子と娘、計3人の子供たちには、全員マーシャルアーツを習わせた。身体を鍛えると同時に、努力することの大切さや礼儀作法も学ばせたかったんだ。このジムを開いたのは2007年だよ」
「イノウエが練習相手を探しているぞ」
5歳から8歳までテコンドー、9歳から11歳までムエタイ、そして12歳からボクシングを始めてプロになった末っ子ジャフェスリーは、リング上で頻繁にスイッチを試みる。
「それがアドバンテージだと私は考えている。打撃系の他競技をやることで、体の使い方、目の動き、パンチの躱し方、タイミング、相手に対する角度等を理解したと思う。アマでは200戦近くして、カリフォルニア州王者にもなった。オーソドックスでも、サウスポーでも両方戦える。対戦相手が嫌がるようにもっていけるんだ(笑)」
インゲマールは2019年に井上尚弥がロサンゼルスでキャンプを張った際、次々とパートナーを壊し、練習相手が見付からない、という話を耳にした。