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19年前にも”ダルビッシュ塾”は存在した! 東北高の後輩が明かす素顔「有さん、背番号1をください」と言うと…ダルビッシュは何と答えた?
posted2023/08/11 11:02
text by
酒井俊作Shunsaku Sakai
photograph by
Hideki Sugiyama
現在発売中のNumber1078号掲載の[エースの実像]ダルビッシュ有「19年前の“ダルビッシュ塾”」より内容を一部抜粋してお届けします。【記事全文は「NumberPREMIER」にてお読みいただけます】
孤高のエースの印象
韓流ドラマ「冬のソナタ」のヨン様が大ブームになっていた2004年の春、東北高校に入学したばかりの硬式野球部の1年生部員はそれどころではなかった。
『本物だ……テレビの人だ!』
高山一輝は思わず声を上げそうになった。いまをときめくダルビッシュ有である。本隊から離れ、基礎トレーニングに励んでいた1年生のもとに、あの長身右腕の3年生がふらりと姿を見せたのだった。
心がざわつくのも無理はない。
数週間前の3月26日、センバツ初戦で熊本工を相手にノーヒットノーランを演じていた。その前年も夏の甲子園決勝に導き、常総学院に敗れはしたが、圧倒的な存在感で一躍、スターになった。一方で、人を射抜くような眼光で、ふてぶてしく、孤高のエースといった印象を醸し出していた。
雲の上の存在のはずなのに、学校のグラウンドでは不思議な空気をまとっていた。名門校にありがちな厳しい上下関係とは無縁で、マウンドで見せる威圧感もない。
あるとき、高山が「ダルさん」と呼びかけたら「有にしてくれ」と言われた。
「怖さが全然ないんです。有さんは、すごく優しい先輩で、いろいろ声をかけてくれていたし、聞いたことに対して、すぐに全部、答えてくれる方だったんです」
高山は中学時代、東京・日野ボーイズで全国大会に出場した右投手で、1年前の夏の甲子園決勝を見て入学を決めた。キャッチボール中が憧れの人の話を聞く時間になった。「いい真っすぐを投げるには下半身が大切だよ」と走り込みの重要性を説かれた。初歩的な話は次第に高度になっていく。
「L」と「逆L」。
ダルビッシュの口からよく出てきたキーワードだ。
「アウトローに真っすぐを出し入れするだけでも、そんなに打たれへん。アウトローを投げられるようになったら、今度は、バッターの『L』と『逆L』。そこに真っすぐをしっかり投げていれば打たれへんから」
投手からみて左打者への内角高め、内角低め、外角低めを線で結べば「L」になる。右打者はその逆だ。コースに投げ込むために、イメージしやすい意識づけだった。
19年前、ダルビッシュから伝えられたこと
やがて、カットボールやシンカーなど変化球の握りも教わった。194cmのダルビッシュは剛腕の印象が強いが、変化球が多彩で、精度も高かった。後輩たちは新しい球種を習得するための“秘策”も聞いた。