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坊主頭から長髪に…あの甲子園エースはなぜ“ロン毛”を選んだのか?「まだまだ切るつもりはないですよ」 西武・高橋光成の現在地
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph byKYODO
posted2023/08/16 06:00
外見の“イメチェン”でも話題の高橋光成
精神的にも逞しくなったエース
“剛”のみならず“柔”の収穫もあった。厳しい条件下の試合を投げ切るために、局面でのギアの変化や強弱を意識的にコントロールできたという。
「ボールが良くなってきたことで、全部三振をとりに行っていた感覚があったんですが、抜くところは抜いて大胆さと繊細さのメリハリもつけられるようになった。新しい自分を見つけられた気がします」
今シーズン、クラブハウスでは高橋が捕手と膝を突き合わせて話し込む姿がよく見られる。正捕手だった森友哉がオリックスに移籍し、バッテリーを組むのは23歳の古賀悠斗ら経験の少ない若手。最初は高橋の方から助言していたが、途中からコミュニケーションの形が変わった。
「キャッチャーは、自分の投球と打者の反応を見ながら常に考えてくれている。その意見を聞かずに自分が教える、というのは違うなと思って。たとえ打たれてもその経験をもとにまた話し合って、二人で助け合っていくことが大事だと思っています」
精神的にも逞しくなったエースの姿に、豊田清投手コーチは「どうすればもっと上手くなれるのか常に向上心を持って取り組んでいる。特にこの2年は自覚を感じています」と目を細める。
球団に伝えた“将来的なMLB挑戦の希望”
7月25日現在7勝6敗、防御率2.08、リーグトップの4完投。好投が白星に結びつかない試合もあるが、目の前の勝敗にこだわらず、一喜一憂しないというメンタルコントロールを徹底しているという。逆に高橋がこだわりを明言しているのは「タフであること」だ。「どんなに体がキツい時でも110球から120球を毎回投げ切る、中6日で1年間回ることは最低限の仕事。そこは絶対守りたい。その覚悟は持ってやっています」
昨年オフの契約更改時に、将来的なMLB挑戦の希望を球団に伝えた。
「甘い世界ではないと思いますけど、一度きりの野球人生でいつかは行ってみたい」
今は心に秘めるその夢も、目指す理想像へと邁進する同じ道の先にある。さらに強く、頼もしく。金髪をなびかせ、ヒーローはゆく。
高橋光成Kona Takahashi
1997年2月3日、群馬県生まれ。'15年、ドラフト1位指名で西武ライオンズに入団。'19年から背番号を「13」に変更し、'21年から3年連続で開幕投手を務めている。190cm、106kg。