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「大事なのは本人が何をやりたいか」藤澤五月を“変身”させた女性トレーナーが大会後の“世間の声”に思うこと…「カーリングにも活きないはずがないんです」
text by
音部美穂Miho Otobe
photograph byYuki Suenaga
posted2023/08/10 11:02
藤澤五月選手のバキバキボディを作ったトレーナーのマムシ〇口子(まむしまるくちこ)さん
本人からお願いされた、大会中の声掛け内容は……?
――大会当日、マムシさんは会場でサポートしていたんでしょうか?
マムシ はい、大会は茨城県で開催されたので、前日から現地入りしてホテルに泊まりました。藤澤さん自身は、大会後のインタビューで「すごく緊張した」と言っていましたが、私にはガチガチになっているようには見えなかったんですよ。あがってしまうというよりも、集中力につながるようなポジティブな緊張感だったのではないかと思います。
ただ、集中するあまり、出番が近づくにつれて彼女の目が“獲物を狙う鷹の目”になっていっちゃって(笑)。ステージ上では笑顔でパフォーマンスすることが大事なので、鋭すぎる視線ではダメ。藤澤さん自身もそれを認識していて、「私、集中すると“狩り”の目になっちゃうから、『笑顔で』と声をかけてほしい」と言われていたので、「笑顔で楽しんで!」と声をかけ、とにかくリラックスさせるように心がけていました。
――ステージでは、どんなパフォーマンスをするのでしょうか?
マムシ ウォーキングとポージングです。なので、ウォーキングも事前に練習していました。12cmくらいあるハイヒールをはいて歩くんですが、藤澤さん、ヒール靴をはきなれていなくて。本番では実に堂々と歩いていましたが、最初にヒールをはいてウォーキングした時は、ヨロヨロしていて、“生まれたての小鹿”状態からのスタートだったんですよ。
――肌も真っ黒になっていましたが、あれは日焼けサロンで焼いたんでしょうか?
マムシ 基本的に、選手は大会の1~2カ月前ぐらいから日サロに通って焼いた上で、前日にダークブラウンのスプレーを体中にふきかけてカラーリングするんです。でも、藤澤さんはお肌が弱くて、日サロで何度も焼くのは難しかった。そのため、カラーリングを2回やって、黒く仕上げました。カラーリングは、お風呂に入れば1週間程度で自然と落ちていきます。彼女も今は、あの白くてきれいなお肌に戻っていますよ。
――カーリングの時の藤澤さんとはまったく異なるメイクも印象的でした。
マムシ ボディメイク大会には、ステージ映えするように独特のメイクが必要なので、メイク指導もしました。「カットクリース」といって、まぶたの上のくぼみに沿ってアイシャドウを入れ、彫りを深く見せたり、つけまつげをしたり。トータルで自分を最大限美しく見せるという点においては、髪型やネイルもきちんと考えておく必要があります。
藤澤さんの場合は、巻き髪にして半分おろしたハーフアップが良いか、前髪があったほうが良いかなどいろいろと試してみて、当日は前髪なしのアップヘアに落ち着きました。こういった過程では、自分を客観視できるかどうかが問われるのですが、その点、彼女は自分に似合うものを見極めるのも上手だと感じました。
――結果は、ノービス3位、オープン2位の好成績でした。
マムシ 藤澤さんとしては、ノービス優勝を目指していたので、悔しかったでしょうね。最初に大会に出たいかどうかについて意向を聞いた時に、「今はまだ分からないけれど……」と前置きしつつも「やると決めたら、やります!!!」と力強く宣言していたんですよ。その時の表情が、すでに獲物を狙う鷹の目でしたからね(笑)。「出場する限りは優勝したい!」という強い気持ちがあったんじゃないかな。
ただ、私としては、最高のコンディションだったと思うし、現時点でのベストではないかと思う。筋トレ歴や経験値がものをいう世界でもあるので、何年もかけて取り組んでいる人には、どうしても敵わない部分もあるんです。そういった強豪がひしめく中で、藤澤さんはステージ上で間違いなく輝いていたし、大会一日を通してすごく楽しんでいた。その姿が本当に印象的でした。