【5】京都翔英高（京都）・小笠原蒼内野手「高次元のスラッガー」

　そして、まさに今。

　この原稿を書いているその手元に、京都府大会決勝で京都翔英高敗退の報が舞い込んできた。

　つい2日前、その準決勝で見たばかりの京都翔英高（京都）・小笠原蒼一塁手（3年・180cm96kg・右投左打）の強打の記憶がパッとよみがえった。

決勝では立命館宇治高を相手に2ランを放った小笠原。1点差で涙をのんだ　©Sankei Shimbun

　二塁打2本の4安打。3点を稼いで、立派に主軸の仕事を果たしてみせた。

　高校通算では30本塁打近いと聞いていた。見るからに屈強そうなユニフォーム姿に、投げても140キロ台だというから、「エイヤー！」の強引な一発屋さんかと思ったら、失礼しました、実は次元の高いスラッガーで驚いた。

　京都の球児なら知らぬ者はいない存在だから、相手投手もまともに勝負には来ない。変化球で、アウトコースで、ボール球を打ってもらおうと繰り出す誘い球には見向きもしない。

　おそらく「打って当然」ぐらいのプレッシャーはあるはずなのに、打ったらヒットやホームランになりそうな失投を根気よく探して、「来た！」と思えばすかさず捉えて長打にするから、相手だってお手上げだろう。

　左中間とセンターオーバーに二塁打2本。センターオーバーは文字通り「弾丸打球」だった。

　プロ志望で、「指名がなかったら野球はやめる」みたいなことを言っているとも聞いたが、そんなこと言わないでぜひ続けてほしい。プロに進んで最初の数年経験するはずのファームの野球と、大学や社会人のハイレベルな野球は大差がないことを、おそらく知らないだけなのだろう。 

　同じ京都にも甲子園でそのプレーを見せてもらいたかった野手はまだまだ何人もいるが、京都翔英高・小笠原蒼一選手は間違いなくその最右翼だった。

＜投手編から続く＞

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